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【判例】「健康で文化的な最低限度の生活」を侵害するという主張 (平成元年2月7日最高裁)「健康で文化的な最低限度の生活」を侵害するという主張

(平成元年2月7日最高裁)

事件番号  昭和58(オ)300

 

最高裁判所の見解

憲法二五条にいう「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは、

きわめて抽象的・相対的な概念であつて、

その具体的内容は、その時々における文化の

発達の程度、経済的・社会的条件、

一般的な国民生活の状況等との相関関係において

判断決定されるべきものであるとともに、

右規定を現実の立法として具体化するに当たつては、

国の財政事情を無視することができず、また、

多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察と

それに基づいた政策的判断を必要とするものである。

 

したがつて、憲法二五条の規定の趣旨にこたえて

具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、

立法府の広い裁量にゆだねられており、

それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の

逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、

裁判所が審査判断するのに適しない事柄で

あるといわなければならない

(最高裁昭和五一年(行ツ)第三〇号同五七年七月七日大法廷判決・

民集三六巻七号一二三五頁)。そうだとすると、

上告人らは、前記所得税法中の給与所得に係る

課税関係規定が著しく合理性を欠き明らかに

裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないゆえんを

具体的に主張しなければならないというべきである。

 

しかるに、本件の場合、上告人らは、もつぱら、

そのいうところの昭和四六年の課税最低限が

いわゆる総評理論生計費を下まわることを主張するにすぎないが、

右総評理論生計費は日本労働組合総評議会(総評)に

とつての望ましい生活水準ないしは将来の達成目標にほかならず、

これをもつて「健康で文化的な最低限度の生活」を

維持するための生計費の基準とすることができないことは

原判決の判示するところであり、

他に上告人らは前記諸規定が立法府の

裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないゆえんを何ら

具体的に主張していないから、上告人らの

憲法二五条、八一条違反の主張は失当といわなければならない。

 

所論は、理由不備、理由齟齬、審理不尽をいうが、

その実質は憲法二五条違背を主張するものにすぎず、

原判決に憲法二五条違背のないことは、

右に述べたとおりである。

論旨は、いずれも採用することができない。

 

同第三点について

所論憲法二五条違反の主張は、

上告人らに対し前記所得税法中の給与所得に係る

課税関係規定を適用することにより上告人らの

「健康で文化的な最低限度の生活」が脅かされることを前提とする。

 

しかし、昭和四六年分の所得税の課税によつて上告人らの

「健康で文化的な最低限度の生活」が

侵害されたということができないことは

原判決の判示するところであり、

その過程に所論の違法はない。

 

したがつて、上告人らの右憲法二五条違反の主張は、

その前提を欠き失当である。

 

また、上告人らの憲法一四条一項違反の主張は、

前記当裁判所昭和六〇年三月二七日大法廷判決の趣旨に徴し、

採用することができない。論旨は、いずれも採用することができない。

 

同第四点について

源泉徴収制度を定める国税通則法及び前記所得税法の規定が

憲法一四条一項に違反するものでないことは、

当裁判所昭和三一年(あ)第一〇七一号同三七年二月二八日大法廷判決

(刑集一六巻二号二一二頁)の趣旨に徴して明らかである。

また、源泉徴収制度の憲法三一条、八四条違反をいう

上告人らの主張は、右憲法一四条一項違反の主張を

前提とするものであるから失当である。

論旨は、いずれも採用することができない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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