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【判例】スキーヤーがクレバスに転落して負傷した事故とスキー場管理者の管理の過失 (平成2年11月8日最高裁)スキーヤーがクレバスに転落して負傷した事故とスキー場管理者の管理の過失

(平成2年11月8日最高裁)

事件番号  昭和60(オ)617

 

最高裁判所の見解

1 第一事故について
(1) 原審の判断は、第一事故は、

Dが本件スキー場の閉鎖を十分周知させないまま

スキーヤーをリフトで運びながら、

第一事故現場付近のコースに閉鎖の表示を

しなかったという過失によるものである、というのである。

 

(2) しかしながら、前示の事実関係によれば、

第一事故は、積雪が減少したために上告協議会において

スキー場の閉鎖を決定した日から一〇日以上を経た、

スキー場の一部に芝生が見え、ハイカーが来ているような暖かい日に、

指導員の資格をもつベテランスキーヤーである被上告人が、

スキー場の閉鎖を掲示してあるロープウェー待合室の

掲示板を見過ごした上、リフトを降りてから

第一事故現場付近に至るまでのより

安全な地形の場所にあるコースのすべてに

閉鎖の表示がされているのを知りながら、

上告協議会が年間を通じてほとんど滑降を

禁止しているような急傾斜地において、

前方にクレバスが見えているにもかかわらず

その付近に向かって滑降し、

右クレバスに転落したというのであるところ、

シーズン末期のスキー場閉鎖の前後においては、

積雪量の減少による危険物の露出、

気象の変動に伴う刻々の雪質の変化及び

これによる積雪の崩落などが予想され、

このような時期にクレバス付近をスキーで

滑降すれば積雪が崩落してクレバスに転落する恐れがあることは、

クレバス付近にコース閉鎖等の表示がなくても、

スキーヤーにおいて当然に

予知し得るところであるというべきであるから、

第一事故は、スキー場閉鎖の掲示を見過ごした上、

前示のような時期、場所において前方に

クレバスがあるのが見えているのに、

あえてクレバス付近を滑降した被上告人自身の過失に

起因して発生したものというべきであって、

Dの本件スキー場の管理の過失によるものということはできない。

 

2 第二事故について

(1) 原審の判断は、上告協議会は、

第二事故当日午前中をもってパトロール業務をやめ、

スキー場を閉鎖することとしたが、Dは、

その事実を周知させないままリフトによりスキーヤーを運びながら、

正午以降パトロールをさせなかったために、

パトロール要員らが午前中のパトロールの際

事故現場のクレバスを発見してその上方に立てた危険を

表示する赤旗が何者かに取り去られたのに気付かず、

遅滞なくこれを復旧しなかった点において、

同人の本件スキー場の管理に過失があったというのである。

 

(2) しかしながら、前示の事実関係によれば、

上告協議会では、第二事故当日をもって

スキー場を閉鎖して、パトロール業務をやめることとしたが、

Dは、その事実を十分周知させないまま

正午以降パトロール業務をさせなかったものの、

上告協議会のパトロール要員らは、

午前中のパトロールの際第二事故現場のクレバスを発見して、

その上方に危険表示のための三本の赤旗を立てたというのであり、他方、

被上告人は、当日は風が強く事故現場付近に

上るためのdリフトを始め、

これより低い位置にあるリフトも運転が停止されていたので、

仲間とともに本件スキー場に到着して

昼食を済ませた後、徒歩で登れる低い斜面で滑降していたところ、

初めにdリフトより低い位置にあるeリフトが動き始めたので

数回これに乗って滑降しているうち、

dリフトが動き出したのでこれに乗り、

終点で降りて徒歩で一〇メートル程登り、

午後三時ころ仲間と一団となって緩やかな斜面を滑降し、

地形が二五度位の急傾斜に変わる地点で、

上告協議会のパトロール要員らが午前中のパトロールの際

第二事故現場のクレバスを発見して

危険表示のための三本の赤旗を立てた地点において、

いったん停止して前方を確認したが、

その時には右赤旗は何者かに取り去られており、

約一〇メートル下にある右クレバスは死角に入って見えなかったので、

最初に飛び出して、右クレバスに

滑り込むような形で転落したというのである。

 

右事実関係によれば、上告会社は、

事故直前まで事故現場付近に上るリフトを停止して

スキーヤーを運んでいなかったので、

一般のスキーヤーがリフト上方に上ることは

困難な状態にあったのであり、

このような状態の下において、事故までの数時間のうちに

リフト上方に午前中に立てた赤旗が取り去られるようなことは

Dにとって予見し難いところであったというべきであるから、

同人が、正午からリフトの運転を開始した

直後の午後三時ころまでの間、第二事故現場付近の

パトロールをさせず、取り去られた赤旗を復旧させていなかったとしても、

同人の第二事故現場付近の管理に原判示の過失が

あったということはできないのであり、他方、

被上告人は、前記のとおり危険が予知されるシーズン末期に、

前年同時期に第一事故を惹起して本件スキー場の

この時期の危険性を熟知しているはずであるにもかかわらず、

第二事故現場上方でいったん停止して前方を確認した際、

前方が約二五度の急傾斜地で、しかも死角になって

安全を確認できない場所があるのに、安全を確認しないまま

その場所に向かって飛び出したというのであるから、

第二事故は、被上告人自身の過失によるものというべきであり、

原判示の事実関係の下において、他にDの本件スキー場の管理に

被上告人主張の過失があったということもできない。

 

四 そうすると、本件各事故が

Dの本件スキー場の管理の過失によるものであるとして

被上告人の請求の一部を認容した原判決には、

法令の解釈適用を誤った違法があり、

この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、

この点に関する論旨は理由があり、

原判決中上告人ら敗訴の部分は破棄を免れない。

 

そして、第一審判決中本件請求を

棄却した部分は正当であるから、

被上告人の控訴は棄却すべきであり、

本件請求を認容した部分は失当であるから、

第一審判決中上告人ら敗訴部分を取り消し、

被上告人の請求を棄却すべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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