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【判例】タクシー会社の乗務員の歩合給の計算方法を定める就業規則の不利益変更 (平成4年7月13日最高裁)タクシー会社の乗務員の歩合給の計算方法を定める就業規則の不利益変更

(平成4年7月13日最高裁)

事件番号  平成3(オ)581

 

最高裁判所の見解

1 労働条件を不利益に変更する就業規則の効力については、

新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、

労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、

原則として許されないと解すべきであるが、

労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ

画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、

当該規則条項が合理的なものである限り、

個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、

その適用を拒否することは許されないというべきである

(最高裁昭和四〇年(オ)第一四五号同四三年一二月二五日大法廷判決・

民集二二巻一三号三四五九頁)。

 

そして、右にいう当該規則条項が合理的なものであるとは、

当該就業規則の作成又は変更が、

その必要性及び内容の両面からみて、

それによって労働者が被ることになる

不利益の程度を考慮しても、なお当該労使関係における

当該条項の法的規範性を是認できるだけの

合理性を有するものであることをいうと解される

(最高裁昭和六〇年(オ)第一〇四号同六三年二月一六日第三小法廷判決・

民集四二巻二号六〇頁)。

 

2 そこで、まず本件就業規則の変更の必要性について検討する。

(一) 前記の事実関係によれば、被上告人ら乗務員の歩合給は、

当該乗務員の運賃収入総額を基準として計算されるが、

これはタクシー運賃の改定により大きく変動するものであるから、

歩合給の計算方法の合意は、もともとその合意がされた時点における

タクシー運賃を前提にしたものというべきである。

 

また、旧計算方法を変更しないとすれば、

本件運賃値上げにより確保されるべき事業者の適正利益が

侵害されるおそれも生じないではなく、

現に札幌市のハイヤー・タクシー業界においては、

従来、運賃の値上げがあった場合には、

これに対応して速やかに歩合給の計算方法を変更しているのである。

 

そうすると、旧計算方法が上告会社と被上告人らとの間の

労働契約の内容になり、それが本件運賃値上げによって

当然に失効するものではないとしても、

本件運賃値上げ後は、労使双方が、

速やかに値上げ後の新運賃を前提として歩合給の計算方法につき

協議をし直すことが予定されているというべきである。

 

(二) 上告会社と被上告人らとの間において、

歩合給の計算方法の変更を春闘以外の時期には

行わないとする合理的理由も考え難い。

 

(三) 歩合給の計算方法は、個々の賃金額そのものではなく、

乗務員全体に共通する賃金の計算方法であるから、

本来、統一的かつ画一的に処理されるべきものであり、

就業規則による処理に親しむものであるが(労働基準法八九条一項二号参照)、

本件においては、上告会社と新労との間では

新計算方法による合意が成立し、一方、

訴外組合との間では三回に及ぶ団体交渉がいずれも不調に終わっているのである。

 

(四) 以上を総合すると、本件就業規則の変更の

必要性はこれを肯認することができる。

 

3 次に、本件就業規則の変更の内容の合理性の有無について検討する。

 

(一) この点については、新計算方法に基づき

支給された乗務員の賃金が全体として従前より

減少する結果になっているのであれば、運賃改定を契機に

一方的に賃金の切下げが行われたことになるので、

本件就業規則の変更の内容の合理性は容易には認め難いが、

従前より減少していなければ、それが従業員の利益をも適正に

反映しているものである限り、

その合理性を肯認することができるというべきである。

 

したがって、本件においては、まず、

新計算方法に基づき支給された賃金額とそれまで

旧計算方法に基づき支給されていた賃金額とを対応して比較し、

その結果前者が後者より全体として減少していないかを

確定することが必要である。そして、

これが減少していない場合には、それが変更後の労働強化によるものではないか、

また、新計算方法における足切額の増加と支給率の減少が

これまでの計算方法の変更の例と比較し急激かつ

大幅な労働条件の低下であって従業員に

不測の損害を被らせるものではないかをも確認するべきである。

 

このほか、新計算方法が従業員の利益をも

適正に反映しているものかどうか等との関係で、

上告会社が歩合給の計算方法として新計算方法を採用した理由は何か、

上告会社と新労との間の団体交渉の経緯等はどうか、さらに、

新計算方法は、上告会社と新労との間の団体交渉により

決められたものであることから、通常は使用者と

労働者の利益が調整された内容のものであるという

推測が可能であるが、訴外組合との関係では

このような推測が成り立たない事情があるかどうか等をも確定する必要がある。

 

(二) 本件就業規則の変更の内容の合理性は、

右の諸点についての認定判断の結果いかんにかかるから、

これらの点の認定判断を怠った原判決には、

就業規則に関する法令の解釈適用を誤った違法、

ひいては審理不尽の違法があるというべきであって、

この違法が判決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。

 

四 論旨はこの趣旨をいうものとして理由があるので、

原判決を破棄し、以上の点につき更に審理を尽くさせるため、

本件を原審に差し戻すこととする。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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