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【判例】保険金請求権の転付債権者に対して告知義務違反を理由とする解除の意思表示をすることの可否 (平成9年6月17日最高裁)保険金請求権の転付債権者に対して告知義務違反を理由とする解除の意思表示をすることの可否

(平成9年6月17日最高裁)

事件番号  平成7(オ)949

 

最高裁判所の見解

(一) 有限会社を保険契約者兼保険金受取人とする

生命保険契約における被保険者が死亡し、かつ、

右有限会社が意思表示を受領する権限を

有する者を欠く状態にある場合において、

転付命令により保険金受取人の保険会社に対する

生命保険金支払請求権を取得した者があるときには、

保険会社は、右転付債権者に対しても告知義務違反を

理由とする生命保険契約の解除の意思表示を

することができるものと解するのが相当である。

 

けだし、被保険者死亡後の生命保険契約における主要な

未履行の債権債務は生命保険金に関する

債権債務だけであるのが通常であって、

この時点においては、右生命保険金債権について

転付命令を取得した転付債権者が右契約の帰すうにつき

強い利害関係を有するものである反面、

保険契約者兼保険金受取人である有限会社は、

右契約の帰すうにつきほとんど利害関係を有していないものである上、

法人の基本的な責務ともいうべき取締役の

選任等を怠っているのであるから、

解除の意思表示を受領する機会を失っても

やむを得ないといえるからである。

 

また、保険契約者以外の者が

保険金受取人と定められている場合について、

通常の保険約款及び簡易生命保険法四一条一項は、

保険契約者の所在を知ることができないときなどには

保険金受取人に対しても解除の意思表示をすることができる旨を定めるが、

転付債権者も右保険金受取人に準じた

地位にあるということができるからである。

 

(二) 有限会社を保険契約者とする生命保険契約について、

保険会社が告知義務違反による解除の原因を知った時点において

解除の意思表示の受領権限を有する者がいないときには、

本件約款の定める解除権の消滅についての

右一1記載の一箇月の期間は、

保険会社が右受領権限を有する者が現れたことを知り、

又は知り得べき時から進行するものと解すべきである。

 

けだし、解除の意思表示の受領権限を有する者がいないという事態は

保険契約者である有限会社が後任取締役を選任しないなど

有限会社側の責めに帰すべき事由によって発生するのが通常であるから、

保険会社が解除の意思表示を相手方に到達させることが

できないにもかかわらず、その解除権が解除原因を知った時から

一箇月の経過により消滅するとすることは、

保険会社に著しく酷な結果をもたらすものであり、また、

その後に後任の取締役等を選任した有限会社が

このことを保険会社に通知しない場合において、

保険会社が速やかに右選任の事実を知ることは困難であるからである。

 

(三) 本件についてこれをみるのに、

保険会社である被上告人が告知義務違反に

よる解除の原因を知った平成三年四月一日の時点において、

保険契約者であるD商店は意思表示の

受領権限を有する者を欠く状態にあったが、

上告人は既に転付命令により

本件生命保険金支払請求権を取得していたから、

被上告人としては転付債権者である上告人に対して

解除の意思表示をすることができたのであり、

したがって、解除権の消滅についての

一箇月の期間は同日から起算すべきものと解さざるを得ないところ、

被上告人は同日から起算して一箇月以内に

上告人に対し有効な解除の意思表示をしていない。

 

3 しかしながら、被上告人は、転付債権者に対する

解除の意思表示をすることには思い至らなかったものの、

告知義務違反による解除の原因を知った直後に

D商店の住所地にあてて解除通知を発送し、

平成五年一月には、D商店を被告とする訴訟を提起した上、

同社の特別代理人に送達されるべき訴状に本件契約を

解除する旨を記載するなど、解除の意思表示をするために

採るべき方法について非常に苦慮しながらも

それなりの努力を尽くしてきたものであることは

前記事実関係から明らかである。

 

他方、D商店は法人の基本的な責務ともいうべき

取締役の選任を怠るなど専ら被上告人の解除の

意思表示の到達を妨害するに帰する行為に終始した結果となっている。

 

以上によれば、D商店が取締役を欠く状態にあったことを原因の

一端とする解除権の消滅による不利益を

一方的に被上告人に帰せしめることは、

著しく不当な結果をもたらすものというべきであって、

本件の事実経過は、信義則に照らし、

被上告人の解除の意思表示が解除権が消滅する以前に

上告人に到達した場合と同視することができ、

被上告人は、告知義務違反による解除の効果を転付債権者である

上告人に主張することができるものというべきである。

 

そうすると、本件契約が告知義務違反により

有効に解除されたものとした原審の判断は、

その結論において正当である。

 

論旨は、原判決の結論に影響しない事項についての

違法を主張するものであって、採用することができない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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