スポンサードリンク

【判例】公務執行妨害罪にいう「暴行」に当たるとされた事例 (平成元年3月9日最高裁)公務執行妨害罪にいう「暴行」に当たるとされた事例

(平成元年3月9日最高裁)

事件番号  昭和59(あ)1036

 

最高裁判所の見解

本件公訴事実につき、差戻し後の第一審判決は、

公務執行妨害、傷害の事実を認定し、

被告人らをいずれも有罪としたが、原判決は、

差戻し後の第一審判決には一部事実誤認があるとした上、

被告人らの行為と被害者の負傷との間には因果関係が認められず、また、

認定可能な被告人らの行為は、いまだ公務執行妨害罪あるいは

暴行罪における違法類型としての暴行に当たるものとは認め難いなどとして、

犯罪の成立を否定し、同判決を破棄して各被告人を無罪とした。

 

ところで、原判決の認定によれば、本件における事実関係の大要は、

次のとおりである。

 

すなわち、兵庫県は、昭和四四年度から、

同和対策事業特別措置法に基づく同和対策事業の一環として、

同和地区中小企業振興資金融資制度を設けていたが、

昭和五一年度からは、右融資制度の運用方式を改めることとし、

昭和五一年六月一日、神戸市生田区下山手通五丁目一番地所在の

兵庫県庁別館県民サロン室などにおいて、

新運用方式による融資申込みの受付事務を開始したところ、

同月三日、被告人Aは、新運用方式の内容の説明を聞くため、

また、被告人Bは、右融資制度に基づく融資申込みをするため、

それぞれ右県民サロン室に赴き、融資申込みの受付事務の

職務に従事していた兵庫県同和局企画調整課企画調整係長C(当時四五年)から、

新運用方式に基づく融資手続などの説明を受けているうち、

やがてその説明に対する不満をあらわにして、

同人に対し、こもごも「ぼけ」「どあほ」などと罵声を浴びせながら

一方的に抗議し、同日午後二時ないし三時ころ、

被告人Aは、激高した態度で所携のパンフレツトを丸めて

Cの座つていたいすのメモ台部分を数回たたいた上、

丸めた右パンフレツトを同人の顔面付近に二、三回突きつけ、

少なくとも一回その先端をあごに触れさせ、更に、

約二回にわたり、同人が座つていたいす

のメモ台部分を両手で持つて右いすの前脚を床から持ち上げては

落とすことによりその身体を揺さぶり、また、

被告人Bは、Cがいすのメモ台部分に

両手をついて立ち上がりかけたところ、

これを阻止するため、その右手首を握つたというのである。

 

右事実を前提として、

原判決における法令の解釈適用について検討すると、

原判決が認定した被告人両名の右各行為は、

被告人らが罵声を浴びせながら一方的に抗議する過程で

なされたものであることをも考慮すれば、

いずれも公務執行妨害罪にいう

暴行に当たるものというべきであるから、

これらが同罪にいう暴行に当たらないとした原判断は、

刑法九五条一項の解釈適用を誤つたものといわざるを得ない

 

したがつて、差戻し後の第一審判決を破棄して

被告人両名を無罪とした原判決には法令違反があり、

これが判決に影響を及ぼし、原判決を破棄しなければ

著しく正義に反することは明らかである。

 

三 よつて、刑訴法四一一条一号により原判決を全部破棄し、

なお、本件事案の内容及び従前の訴訟経過等を考慮し、

この際、当審において自判するのを相当と認め、

同法四一三条但書により直ちに判決すべきところ、

原判決において差戻し後の

第一審判決の認定事実中一部が否定されているので、

同判決をも破棄した上、原判決の認定事実の範囲内で、

被告事件について更に次のとおり判決する。

 

原判決が認定した被告人A、同Bの前記各行為に法律を適用すると、

被告人両名の各行為は、それぞれ刑法九五条一項に該当するので、

所定刑中いずれも懲役刑を選択し、

その刑期の範囲内で各被告人を懲役二月に処し、

情状により、被告人両名につき同法二五条一項を適用して、

この裁判の確定した日から一年間右各刑の執行を猶予し、

原審及び差戻し前の第一審における訴訟費用については、

刑訴法一八一条一項本文により、その二分の一ずつを

各被告人に負担させることとする。なお、

各被告人に対する本件公訴事実中その余の点は、

前記認定の各公務執行妨害罪と一罪の関係にあるとして

起訴されたものであるから、

主文において特に無罪の言渡しをしない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


スポンサードリンク