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【判例】公務災害認定外裁決取消 (平成8年3月5日最高裁)公務災害認定外裁決取消

(平成8年3月5日最高裁)

事件番号  平成4(行ツ)70

 

最高裁判所の見解

記事実関係によれば、特発性脳内出血は、

破裂した微細な血管部分から微量の血液が徐々に浸出するもので、

出血開始から血腫が拡大し意識障害に至るまでの

時間がかなり掛かるというのである。

 

そして、記録に現れた関係医師の証言等によれば、

血圧の変動が出血の態様、程度に

影響を及ぼすことがあることがうかがわれ、

また、肉体的又は精神的負荷が血圧変動や血管収縮に

関係し得ることは経験則上明らかであるから、

出血の態様、程度が、血管破裂後に当人が安静にしているか、

肉体的又は精神的負荷が掛かった状態にあるのかによって

影響を受け得るものであることを否定することはできない。

 

そうすると、出血開始時期がポートボールの

試合の審判をする以前であったとしても、

右審判による負担やこれによる血圧の一過性の

上昇等が出血の態様、程度に影響を及ぼす可能性も

本件証拠関係上は十分に考えられるところである。

 

また、午前中の段階で、Dは身体的不調を訴えていたのであるから、

出血開始から血腫が拡大し意識障害に

至るまでの時間がかなり掛かるという

特発性脳内出血の性質からして、直ちに診察、

手術を受ければ死亡するに至らなかった可能性ももとより否定し難い。

 

結局、出血開始後の公務の遂行がその後の症状の

自然的経過を超える増悪の原因となったことにより、

又はその間の治療の機会が奪われたことにより

死亡の原因となった重篤な血腫が形成されたという可能性を、

前記二の3のような説示のみをもって、

否定し去ることは許されず、したがって、

原審が、これらの可能性の有無について審理判断を尽くさないまま、

死亡と公務との間の因果関係の判断に当たって

およそ出血開始後の公務は無関係であるとしたのは、

早計に失するものといわなければならない。

 

そして、前記事実関係によれば、Dは、

当日朝、体調の異変に気付きながら、

ポートボールの練習指導や授業等を行っており、

しかも、前記のように審判の交代を二度にわたって申し出ながら、

それが聞き入れられず、やむなくポートボールの

試合の審判を担当したというのである。

 

右事実関係からすれば、Dは、

ポートボールの練習指導の中心的存在であり、

他に適当な交代要員がいないため交代が困難であったことから、

やむを得ずポートボールの試合の審判に当たったことがうかがわれる。

 

そうすると、仮に前記の可能性が肯定されるならば、

Dの特発性脳内出血が後の死亡の原因となる重篤な症状に至ったのは、

午前中に脳内出血が開始し、体調不調を自覚したにもかかわらず、

直ちに安静を保ち診察治療を受けることが困難であって、

引き続き公務に従事せざるを得なかったという、

公務に内在する危険が現実化したことによるものとみることができる。

 

以上によれば、出血開始後の公務の遂行が特発性脳内出血の態様、

程度に影響を与えた可能性、死亡に至るほどの

血腫の形成を避けられた可能性等の点について

審理判断を尽くすことなく、前記のような説示をしただけで

出血開始後の公務は無関係であるとして

公務起因性を否定した原審の判断には審理不尽又は

理由不備の違法があり、右違法は

原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり、

原判決は破棄を免れない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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