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【判例】刑法162条、163条1項にいう「有価証券」 (平成3年4月5日最高裁)刑法162条、163条1項にいう「有価証券」

(平成3年4月5日最高裁)

事件番号  平成2(あ)791

 

最高裁判所の見解

一 刑法一六二条及び一六三条に

それぞれ規定する有価証券(以下「有価証券」という。)とは、

財産上の権利が証券に表示され、その表示された財産上の権利の行使につき

その証券の占有を必要とするものをいうと

解される(最高裁昭和三一年(あ)第四七二六号

同三二年七月二五日第一小法廷判決・

刑集一一巻七号二〇三七頁参照)。

 

ところで、いわゆるテレホンカードについては、

その発行時の通話可能度数及び残通話可能度数を示す

度数情報並びに当該テレホンカードが発行者により

真正に発行されたものであることを示す発行情報は、

磁気情報として電磁的方法により記録されており、

券面上に記載されている発行時の通話可能度数及び

発行者以外の右情報は、券面上の記載からは知り得ないが、

残通話可能度数については、カード式公衆電話機に

テレホンカードを挿入すれば、度数カウンターに赤色で表示され、

右の発行情報もカード式公衆電話機に

内蔵されたカードリーダーにより

読み取ることができるシステムとなっている。

 

そうすると、テレホンカードの右の磁気情報部分並びに

その券面上の記載及び外観を一体としてみれば、

電話の役務の提供を受ける財産上の権利が

その証券上に表示されていると認められ、かつ、

これをカード式公衆電話機に插入することにより

使用するものであるから、テレホンカードは、

有価証券に当たると解するのが相当である。

 

所論は、有価証券偽造罪は、文書偽造罪の特別規定であるから、

文書に当たらないものを有価証券に当たると解するのは不当であり、

テレホンカードの磁気情報は、

カード式公衆電話機を作動させる道具としての

機能を果たすにすぎないものであって、

電話の役務の提供を受ける財産上の権利を

表示したものとはいえない旨主張する。

 

そこで、検討するのに、従来、有価証券が

文書であると考えられてきたのは、

一般に文書の形態のものしか存在しなかったからであるにとどまり、

文書でないものは有価証券に当たらないと解することはできない。

 

もっとも、昭和六二年法律第五二号による

刑法の一部改正により、新たに同法七条ノ二に

電磁的記録についての定義規定が置かれ、

一五七条一項に電磁的公正証書原本不実記録罪が、

一五八条一項に同供用罪が、一六一条ノ二に

電磁的記録不正作出罪、同供用罪がそれぞれ新設されたが、

有価証券偽造罪については、何らの改正もされなかった。

 

しかし、この改正の経過から、

電磁的記録を含むテレホンカードのようなものは

有価証券ではないことが確認されたと解することはできない。

 

すなわち、右改正の趣旨は、

電磁的記録が通常の文書と異なり、

その物自体としての可読性がない上、

文書と同様の意味で作成名義人をとらえることが

困難であることなどによるものと考えられる。

 

これに対し、有価証券については、右改正前から、

本件で問題となっているテレホンカードのように、

携帯することのできるカード型で、

その券面上の記載及び外観から、

作成名義人に当たる発行者及び提供を受ける役務の

種類・数量を容易に知り得るものが存在していたが、

この種のカードの場合、前記のように、

磁気情報部分のみが有価証券に当たるのではなく、

これと券面上の記載及び外観が一体不可分のものとして、

有価証券としての実体を形成していたのであるから、

右改正により文書に関してのみ電磁的記録についての規定が

新設されたからといって、このような形態のカードが

有価証券でないことが確認されたということはできないのである。

 

次に、テレホンカードは、その可読性のない磁気情報部分こそが

電話の役務の提供を受ける財産上の権利の行使にとって

不可欠の部分であって、それを欠くときは、

単にカード式公衆電話機を作動させる道具としての

役割を果たすことができないばかりでなく、

権利の行使自体が不可能となるものである。

 

テレホンカードは、券面上の記載及び外観と

電磁的記録部分に記録された磁気情報とが一体となって、

電話の役務の提供を受ける財産上の権利をカードに

化体させたものにほかならない。

 

したがって、所論は理由がなく、採用することができない。

 

二 有価証券の変造とは、真正に作成された

有価証券に権限なく変更を加えることをいうと解されるところ、

テレホンカードを有価証券に当たると解する以上、

その磁気情報部分に記録された通話可能度数を権限なく

改ざんする行為がこれに当たることは、明らかである。

 

また、偽造等をした有価証券の行使とは、

その用法に従って真正なものとして

使用することをいうと解されるから

(大審院明治四三年(れ)第二九一二号

同四四年三月三一日第一刑事部判決・刑録一七輯七巻四八二頁参照)、

変造されたテレホンカードをカード式公衆電話機に挿入して

使用する行為は、変造された

有価証券の行使に当たるというべきである。

 

三 そうすると、行使の目的をもって、

被告人がA株式会社作成に係るテレホンカードの

通話可能度数である五〇度を一九九八度に改ざんした上、

Bに対し、その旨を造げてこれを売り渡した行為は、

有価証券変造び変造有価証券交付の各罪に当たるから、

これと同旨の原判決の判断は、正当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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