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【判例】刑訴法378条3号,刑訴法392条2項,刑訴法400条 (平成16年2月16日最高裁)刑訴法378条3号,刑訴法392条2項,刑訴法400条

(平成16年2月16日最高裁)

事件番号  平成14(あ)876

 

1 原判決の認定及び記録によると,

本件の審理の経過は,次のとおりである。

(1) 検察官は,平成12年8月25日付け起訴状をもって,

「被告人は,業務その他正当な理由による場合でないのに,

平成12年8月14日午後9時53分ころ,福岡市内の路上において,

刃体の長さ約8.9㎝の折りたたみ式ナイフ1本を携帯した。」旨の

銃砲刀剣類所持等取締法違反事件1件を起訴し,

同年12月15日付け起訴状をもって,

「被告人は,平成12年8月14日午後9時20分ころ,

福岡市内にあるパチンコ店a店内において,同店従業員に対し,

『お前,何か』などと語気鋭く申し向け,刃体の長さ約8.9㎝の

折りたたみ式ナイフ1本を示すなどして同人の

生命,身体等に危害を加えかねない気勢を示し,もって,

兇器を示して脅迫した。」旨の暴力行為等処罰に関する

法律違反事件1件(以下,同起訴状の公訴事実を

「本件公訴事実」という。)を起訴した。

 

(2) 第1審裁判所は,両事件を併合して審理した上,

一部有罪一部無罪の判決をしたが,その概要は,

次のアないしウのとおりである。

 

ア 平成12年8月25日付け起訴状の公訴事実については,

被告人を無罪とする旨理由中で説示するとともに,

その旨主文でも言い渡している。

 

イ 本件公訴事実については,被告人を無罪とする旨

理由中では説示しているものの,その旨主文では言い渡していない。

 

ウ 罪となるべき事実として,

「被告人は,業務その他正当な理由による場合でないのに,

平成12年8月14日午後9時20分ころ,

福岡市内にあるパチンコ店a店内において,

刃体の長さ約8.9㎝の折りたたみ式ナイフ1本を携帯した。」

旨の銃砲刀剣類所持等取締法違反の

事実(以下「本件犯罪事実」という。)を

認定した上,本件犯罪事実について被告人を

罰金10万円に処する旨主文で言い渡している。

 

そして,この点に関し,本件公訴事実には

本件犯罪事実の主張も含まれているので,

訴因変更の手続は不要である旨判示している。

 

(3) 被告人は第1審判決中有罪部分について控訴を申し立てたが,

検察官は控訴を申し立てなかった。

 

このため,第1審判決中平成12年8月25日付け

起訴状の公訴事実についての無罪部分は,確定した。

 

(4) 原審において,弁護人は,

本件公訴事実と併合罪の関係にあって起訴されていない

本件犯罪事実を認定し有罪の判決をした第1審判決には,

刑訴法378条3号後段の審判の請求を受けない事件について

判決をした違法があるから,破棄を免れない旨主張し,

検察官は,弁護人の控訴趣意は理由がない旨主張した。

 

原判決は,弁護人の控訴趣意をいれるとともに,

職権調査の結果によれば,本件公訴事実について

被告人を無罪とする旨主文で言い渡していない第1審判決には,

同号前段の審判の請求を受けた事件について

判決をしなかった違法もあると認められる旨判示して,

第1審判決中有罪部分を破棄し本件を第1審裁判所に差し戻した。

 

2 原判決が,第1審判決には

刑訴法378条3号前段及び後段の違法があるとして

これを破棄した点は,正当である。

 

しかし,以下に述べるように,原判決が,

本件を第1審裁判所に差し戻した点は,是認することができない。

 

上記1でみたとおり,第1審判決は,

罪数に関する法解釈を誤ったことが原因であるとはいえ,

絶対的控訴理由である同号前段及び後段の違法を犯していたのであるが,

検察官は控訴せず,被告人のみが控訴して,

第1審判決には同号後段の違法がある旨主張していたものである。

 

被告人は,本件公訴事実については,

第1審判決の理由中において無罪とされており,

不服を申し立てる利益がなかったことから,

第1審判決中の有罪部分である本件犯罪事実についてのみ

控訴を申し立てたが,本件公訴事実は,被告人の控訴申立てに伴い,

法律上当然に原審に移審係属するところとなったのである。

 

このような訴訟の経過にかんがみると,

被告人の控訴申立てを契機として,原審裁判所が,

職権により本件公訴事実について調査を加え,

同号前段の違法がある旨指摘して第1審判決を破棄するにとどまらず,

本件公訴事実を有罪とする余地があるものとして

第1審裁判所に差し戻し,あるいは自ら有罪の判決をすることは,

職権の発動の限界を超えるものであって許されないというべきである。

 

そうすると,本件公訴事実については,

第1審判決の無罪の結論に従うほかないのであるから,

原審裁判所としては,本件を第1審裁判所に差し戻すのではなく,

自判して被告人に対し無罪を言い渡すべきであったといわねばならない。

 

また,本件犯罪事実は,公訴提起がなかったにもかかわらず,

第1審裁判所がこれを認定して有罪の判決をしたため,

上記控訴申立てに伴い事実上原審に係属するに至ったものであるから,

本件犯罪事実については,公訴提起の手続がその規定に

違反したため無効である場合に準じて,

公訴棄却を言い渡すべきであったと解される

(最高裁昭和25年(れ)第771号同年10月24日

第三小法廷判決・刑集4巻10号2121頁参照)。

 

したがって,原判決は,上記の点において

判決に影響を及ぼすべき法令の違反があり,

これを破棄しなければ著しく正義に反すると認められる。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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