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【判例】前年の稼働率によって従業員を翌年度の賃金引上げ対象者から除外する旨の労働協約条項の一部が公序に反し無効とされた事例 (平成元年12月22日最高裁)前年の稼働率によって従業員を翌年度の賃金引上げ対象者から除外する旨の労働協約条項の一部が公序に反し無効とされた事例

(平成元年12月22日最高裁)

事件番号  昭和59(オ)303

 

最高裁判所の見解

従業員の出勤率の低下防止等の観点から、

稼働率の低い者につきある種の経済的利益を得られないこととする制度は、

一応の経済的合理性を有しており、

それ自体を違法視することはできない。

 

しかし、当該制度が、稼動率算定の基礎となる不就労に

労基法又は労組法上の権利に基づく不就労を含めるものである場合において、

基準となっている稼働率の数値との関連において、

労基法又は労組法上の権利を行使したことにより

経済的利益を失わせることから権利の行使を抑制し、

ひいては右各法が労働者に各権利を保障した趣旨を

実質的に失わせるようなものと認められるときは、

当該制度を定めた労働協約条項は、

公序に反するものとして無効となると解するのが相当である。

 

右の見地から本件八〇パーセント条項の効力について

考察するに、同条項における稼働率算定の基礎となる不就労には、

労働者の責に帰すべき原因等によるものばかりでなく、

比較的長期間の不就労を余儀なくされる産前産後の休業、労働災害による休業、

その他労基法又は労組法上の権利に基づくものすべてが含まれている。

 

また、本件八〇パーセント条項に該当した者につき除外される

賃金引上げにはベースアップ分も含まれているのであり、

しかも、上告会社における賃金引上げ額は、

毎年前年度の基本給額を基礎として決められるから、

賃金引上げ対象者から除外されていったん生じた不利益は

後続年度の賃金において残存し、

ひいては退職金にも影響するものと考えられるのであり、

同条項に該当した者の受ける経済的不利益は相当大きなものである。

 

そうすると、本件八〇パーセント条項の制度のもとでは、

一般的に労基法又は労組法上の権利の行使を

なるべく差し控えようとする機運を生じさせ、

その権利行使が抑制されるものと考えられる。

 

以上によれば、本件八〇パーセント条項は、

労基法又は労組法上の権利に基づくもの以外の不就労を基礎として

稼働率を算定する限りにおいては、その効力を否定すべきいわれはないが、

反面、同条項において、労基法又は労組法上の権利に基づく

不就労を稼働率の基礎としている点は、労基法又は

労組法上の権利の行使を抑制し、ひいては、

右各法が労働者に各権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものというべきであり、

したがって、公序に反し無効であるといわなければならない。

 

なお、前記の本件八〇パーセント条項妥結に至るまでの

上告会社とD労組との交渉経過等に照らすと、

本件八〇パーセント条項のうち、労基法又は労組法上の権利に基づく

不就労を稼動率算定の基礎としている点につき右の理由により効力を

否定された場合に、その残余において同条項の効力を認めることは、

労使双方の意思に反しないとみることができ、また、

本件八〇パーセント条項の前記の一部無効は、

右賃金引上げの根拠条項の効力に影響を及ぼすものではないと解される。

 

四 結局、本件八〇パーセント条項を全体として公序に反し

無効であるとした点において、原審の判断には

法令の解釈適用を誤った違法があるものといわなければならず、

右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、

論旨はこの点において理由があることになり、

原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。

 

そして、本件については、個々の被上告人らに係る

未払賃金等請求権の有無等について

更に審理を尽くさせる必要があるから、

これを原審に差し戻すこととする。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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