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【判例】取締役を選任する旨の株主総会決議が不存在である場合とその後の取締役を選任する旨の株主総会決議の効力 (平成2年4月17日最高裁)取締役を選任する旨の株主総会決議が不存在である場合とその後の取締役を選任する旨の株主総会決議の効力

(平成2年4月17日最高裁)

事件番号  昭和60(オ)1529

 

最高裁判所の見解

すなわち、記録中の上告人の定款によると、

上告人の取締役の任期は二年、

員数は五人以内と定められていることが、また、

同じくその商業登記簿によると、

昭和四九年六月三〇日当時上告人の取締役又は

代表取締役に就任していた者は、いずれも、

昭和四七年一二月二五日に選任(重任)されたものであることが

窺われるところ、前記事実関係によれば、

被上告人が上告人の取締役を辞任した事実はないというのであるから、

被上告人はその任期が満了する昭和四九年一二月二五日まで

上告人の取締役たる地位を有していたものというべきところ、

同日の経過をもって、被上告人のみならず、

D、E及びFの三名の任期も満了するから、

上告人は商法二五五条に定める取締役の員数を欠くことになり、

したがって、同法二五八条一項に基づき、

右四名は、新たに選任された取締役が就職するまで、

引き続き上告人の取締役としての

権利義務を有するものといわなければならず、また、

同法二六一条三項、二五八条一項に基づき、

被上告人は、同様に、引き続き代表取締役としての

権利義務を有するものといわなければならない。

 

もっとも、上告人の商業登記簿上は、昭和五九年一月三一日に

新たにD、F及びGの三名が取締役に

選任された旨の登記がされていることは原審が確定したところであり、また、

記録中の上告人の商業登記簿によると、

その前の昭和五三年五月二五日、昭和五六年一月三一日にも

新たに取締役が選任された旨の登記がされていることが窺われる。

 

しかし、昭和四九年七月一日付けの株主総会におけるGを

取締役に選任する旨の決議が存在するものとはいえないことは

前記のとおりであるところ、

このように取締役を選任する旨の株主総会の決議が

存在するものとはいえない場合においては、

当該取締役によって構成される取締役会は

正当な取締役会とはいえず、かつ、

その取締役会で選任された代表取締役も

正当に選任されたものではなく

(ちなみに、本件においては、Dを代表取締役に選任する旨の

昭和四九年七月一日付けの上告人の取締役会の

決議自体存在しないことは、原審が確定しているところである。)、

株主総会召集権限を有しないから、

このような取締役会の招集決定に基づき、

このような代表取締役が招集した株主総会において

新たに取締役を選任する旨の決議がされたとしても、

その決議は、いわゆる全員出席総会においてされたなど

特段の事情がない限り

(最高裁昭和五八年の第一五六七号同六〇年一二月二〇日第二小法廷判決・

民集三九巻八号一八六九頁参照)、

法律上存在しないものといわざるを得ない。

 

したがって、この瑕疵が継続する限り、以後の株主総会において

新たに取締役を選任することはできないものと解される。

 

そして、本件においては、

このような特段の事情についての主張立証はない。

 

してみると、昭和六〇年一月三〇日当時、

被上告人、D、F及びEの四名は、

商法二五八条一項に基づき、上告人の取締役としての

権利義務を有していたものであり、

このうち被上告人、D及びFの三名によって

同日開催された取締役会における、

被上告人を上告人の代表取締役から解任し、

Dを代表取締役に選任する旨の前記決議は、

招集通知を欠いたEが出席してもなお決議の結果に影響を及ぼさないと

認めるべき特段の事情がある場合には有効と解すべきものである

(最高裁昭和四三年(オ)第一一四四号同四四年一二月二日第三小法廷判決・

民集二三巻一二号二三九六頁参照)から、

この場合にあっては、被上告人は、

上告人の取締役としての権利義務は依然として有するものの、

代表取締役としての権利義務は消滅し、

Dが代表取締役たる地位を取得したものといわなければならない。

 

したがって、昭和六〇年一月三〇日の時点においては

被上告人、D、E及びFの四名が

上告人の取締役であるとはいえないことを理由に、

同日開催された取締役会における前記決議は存在しないものと解し、

被上告人が上告人の代表取締役の地位にあることの確認及びDが

上告人の代表取締役の地位にないことの確認を求める

被上告人の請求を認容すべきものとした原判決には、

法令の解釈適用を誤り、ひいては

審理不尽の違法があるものというべきであり、

右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。論旨は、

以上の趣旨をいうものとして理由があり、

原判決中右請求に係る部分は、破棄を免れない。

 

そして、右部分については、

昭和六〇年一月三〇日開催の取締役会の決議の効力につき

更に審理を尽くさせる必要があるから、

これを原審に差し戻すべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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