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【判例】固定資産税審査決定取消 (平成2年1月18日最高裁)固定資産税審査決定取消

(平成2年1月18日最高裁)

事件番号  昭和61(行ツ)138

 

最高裁判所の見解

法によれば、固定資産税の課税標準たる固定資産の価格は、

市町村長が固定資産評価員の行った評価に基づいて決定し(四一〇条)、

固定資産課税台帳に登録するのであるが(四一一条一項)、

固定資産税の納税者は、その納付すべき当該年度の

固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に

登録された価格(以下「登録価格」という。)に不服があるときは、

委員会に審査の申出をすることができるとされ(四三二条一項)、また、

委員会は、右審査の申出を受けた場合においては、

直ちにその必要と認める調査、口頭審理その他事実審査を行った上、

その申出を受けた日から三〇日以内に審査の決定を

しなければならないものとされ(四三三条一項)、

審査申出人の申請があったときは、特別の事情がある場合を除き、

口頭審理の手続によらなければならず(同条二項)、

この場合には、審査申出人、市町村長又は

固定資産評価員その他の関係者の出席及び証言を求めることができ(同条三項)、

その手続は公開しなければならない(同条六項)と規定されている。

 

法が固定資産の登録価格についての不服の審査を

評価、課税の主体である市町村長から独立した

第三者的機関である委員会に行わせることとしているのは、

中立の立場にある委員会に固定資産の

評価額の適否に関する審査を行わせ、

これによって固定資産の評価の客観的合理性を担保し、

納税者の権利を保護するとともに、

固定資産税の適正な賦課を期そうとするものであり、さらに、

口頭審理の制度は、固定資産の評価額の適否につき

審査申出人に主張、証拠の提出の機会を与え、

委員会の判断の基礎及びその過程の客観性と

公正を図ろうとする趣旨に出るものであると解される。

 

そうであってみれば、口頭審理の手続は、

右制度の趣旨に沿うものでなければならないが、

それはあくまでも簡易、迅速に納税者の権利救済を

図ることを目的とする行政救済手続の一環をなすものであって、

民事訴訟におけるような厳格な意味での口頭審理の方式が

要請されていないことはいうまでもない。

 

右の見地に立って、本件口頭審理手続に違法が

存するかどうかについて検討する。

 

まず、審査申出人に対し

当該宅地の評価の根拠等を知らせる措置に関して

違法が存するかどうかについてみるに、

宅地の評価は、法三八八条以下の規定及び

固定資産評価基準の定めるところに従い、

専門技術的な方法、手順で行われるものであって、

固定資産評価基準の「その他の宅地評価法」を

例にとっていえば、

(1) おおむねその状況が類似していると

認められる宅地の所在する地区ごとに

状況類似地区の区分を行う、

(2) 状況類似地区ごとに道路に沿接する宅地のうち、

奥行、間口、形状等からみて標準的と認められるものを

標準宅地として選定して、その適正な時価を評定し

評点数を付設する、

(3) 標準宅地の評点数に比準して、

状況類似地区内の各筆の宅地に評点数を付設する、

という方法、手順で評価をするものと定められているのであるが、

納税者は、固定資産課税台帳を閲覧して

その所有に係る宅地の評価額を知り、

これに不服を抱いた場合に、不服事由を具体的に特定するために

必要なその評価の手順、方法、根拠等を

ほとんど知ることができないのが通常である。

 

したがって、宅地の登録価格について審査の申出があった場合には、

口頭審理制度の趣旨及び公平の見地から、

委員会は、自ら又は市町村長を通じて、審査申出人が

不服事由を特定して主張するために必要と認められる合理的な範囲で

評価の手順、方法、根拠等を知らせる措置を

講ずることが要請されているものと解される。

 

しかし、委員会は、審査申出人において他の納税者の

宅地の評価額と対比して評価が公平であるかどうかを

検討することができるように、他の状況類似地域における宅地の

評価額等を了知できるような措置を講ずることまでは

要請されていないものというべきである。

 

けだし、法三四一条五号によれば、

固定資産税の課税標準となる固定資産の価格は、

適正な時価をいうものとされているのであって、

宅地の登録価格についての不服の審査は、

宅地の登録価格が適正な時価を

超えていないかどうかについてされるべきものである。

 

そして、法によれば、自治大臣は固定資産評価基準を定め、

これを告示しなければならず(三八八条一項)、

市町村長は固定資産評価基準に従って固定資産の価格を

決定しなければならない(四〇三条一項)と規定され、また、

固定資産評価基準によれば、市町村長は、

評価の均衡を確保するため当該市町村の

各地域の標準宅地の中から一つを基準宅地として選定すべきものとされ、

標準宅地の適正な時価を評定する場合においては、

この基準宅地との評価の均衡及び標準宅地相互間の評価の均衡を

総合的に考慮すべきものとされているのであって、

法は、このように統一的な一律の評価基準によって評価を行い、かつ、

所要の調整を行うことによって

各市町村全体の評価の均衡を確保することとし、

評価に関与する者の個人差に基づく評価の不均衡も、

法及び固定資産評価基準の適正な運用によって

解消することとしているものと解される。

 

したがって、特定の宅地の評価が

公平の原則に反するものであるかどうかは、

当該宅地の評価が固定資産評価基準に従って

適正に行われているかどうか、

当該宅地の評価に当たり比準した標準宅地と

基準宅地との間で評価に不均衡がないかどうかを審査し、

その限度で判断されれば足りるものというべきであり、

そうである以上、審査申出人が状況類似地域における

他の宅地の評価額等を了知できるような措置を講ずべき

手続上の要請は存しないと考えられるのである。

 

原審の確定した前記事実によれば、

本件の口頭審理期日において、市の税務担当者は、

本件標準宅地の価格、評点数、その評価の方法及び

手順の概要、本件土地の本件標準宅地に対する

比準割合、評点一点当たりの価格を説明しており、また、

市の基準宅地の価格は被上告人が本件審査申出前に

了知していたところであって、被上告人において

不服事由を特定して主張するために必要と認められる

合理的な範囲の事実は明らかにされているものと認めることができる。

 

したがって、右の点に関する上告人の措置に

違法とすべき点は存しないというべきである。

 

次に、実地調査の結果等の取扱いに関して

違法が存するかどうかについてみるに、

もとより、委員会は、口頭審理を行う場合においても、

口頭審理外において職権で事実の調査を行うことを

妨げられるものではないところ(法四三三条一項)、

その場合にも審査申出人に立会いの機会を

与えることは法律上要求されていない。また、

委員会は、当該市町村の条例の定めるところによって、

審査の議事及び決定に関する記録を作成し、

法四三〇条の規定によって提出させた資料又は

右の記録を関係者の閲覧に

供しなければならないとされているのであって

(法四三三条四項、五項、大和郡山市固定資産評価審査委員会条例

(昭和三八年大和郡山市条例第二号)七条ないし九条)、

審査申出人は、右資料及び右条例によって作成される事実の調査に

関する記録を閲覧し、これに関する反論、証拠を

提出することができるのであるから、

委員会が口頭審理外で行った調査の結果や収集した資料を判断の基礎として

採用し、審査の申出を棄却する場合でも、

右調査の結果等を口頭審理に上程するなどの手続を経ることは

要しないものと解すべきである。

 

原審の確定した前記事実によれば、

本件において、上告人は、口頭審理外で

行った実地調査の結果等の一部を判断の基礎として

採用していることが窺われるところ、上告人は、

昭和五七年五月二〇日の実地調査後の同月二六日、

被上告人の要請により被上告人と上告人の委員らとの協議会を開催し、

その席上において同月二〇日に実地調査を行ったことを

被上告人に知らせた上、被上告人の意見を聴取したものの、

右調査の結果等を口頭審理に上程していないというのであるが、

このような実地調査の結果等の取扱いに

何らの違法も存しないことは、右に説示したところに照らして明らかである。

 

四 以上によれば、本件口頭審理手続に口頭審理を

要求した法の趣旨に反すると認められる程度に重大な瑕疵があったとし、

これを理由として本件決定を取り消すべきものとした前記原審の判断には、

法令の解釈適用を誤った違法があるものといわなければならず、

右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、

論旨は理由があり、原判決は、その余の論旨について

判断するまでもなく破棄を免れない。

 

そして、本件については、本件決定に取消原因となる

その余の違法が存するかどうかについて

更に審理をさせる必要があるから、

これを原審に差し戻すこととする。

 

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇七条一項に従い、

裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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