スポンサードリンク

【判例】国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵 (平成2年11月8日最高裁)国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵

(平成2年11月8日最高裁)

事件番号  昭和61(オ)256

 

最高裁判所の見解

国家賠償法二条一項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、

営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい

(最高裁昭和四二年(オ)第九二一号同四五年八月二〇日第一小法廷判決・

民集二四巻九号一二六八頁)、

右の通常有すべき安全性は、営造物の設置管理者において

通常予測することのできる用法を前提として定めるべきものであって、

この趣旨における安全性に欠けるところがない場合には、

営造物の通常の用法に即しない行動の結果事故が生じたとしても、

右事故が営造物の設置又は管理の瑕疵によるものである

ということはできないと解するのが相当である

(最高裁昭和五三年(オ)第七六号同年七月四日第三小法廷判決・

民集三二巻五号八〇九頁参照)。

 

これを本件についてみるに、原審の確定した

前記事実関係によれば、幅員七・七メートルある

本件県道の道路端には図面第二図のとおり幅約四〇センチメートル、

深さ約一五センチメートルのコンクリート製の無蓋側溝が

設置されており、更に側溝の東側には

図面第二図のとおり道路面から縁壁上端までの高さ約四〇センチメートル、

幅約二五センチメートルの石造の本件縁壁が設置されていたというのであり、

本件縁壁の右材質、高さ、形状等の構造に加え、

本件県道の幅員や見通し状況、側溝の存在等を考慮すると、

本件縁壁は、通常予測することのできる用法を

前提として生ずる事故によって車両等が路外へ

転落することを防止する機能に欠けるところはなかったものというべきである。

 

そして、前記認定事実によれば、本件事故は、

Dが本件自動車を運転中、先行車を

無理に追い越そうとして過って本件自動車の右前輪を

本件県道東側の側溝に落とした際、

減速あるいは停止の措置をとることなく、

アクセル・ペタルを踏み込んで加速した勢いで

側溝から脱出しようとし、かえって

側溝にハンドルをとられ、右前輪のホイルナット付近を

本件縁壁に激突させ、そのままの状態で

本件自動車を約一七・六メートルも進行させ、

その間、約一三・三メートルにわたって

本件縁壁の上段の縁石を下段の縁石から剥離、崩落させ、

本件自動車を下段の縁石を乗り越えて路外に進出するに至らしめ、

急遽制動措置をとったが時すでに遅く、

本件自動車は制御を失い、本件軌道敷内に転落した

結果発生したというのである。

 

そうであれば、Dのとった措置は、

本件自動車が大型車両で強い駆動力があることを

過信して強引に側溝からの脱出を図ったもので、

本件事故現場付近の前記地理的状況等にかんがみれば、

極めて異常かつ無謀な運転行為であって、

本件県道の管理者である上告人において

通常予測することのできない行動であり、

本件事故はこのようなDの無謀な行動に

起因するものであったということができる。

 

そうだとすれば、本件県道における車両等の

転落防止施設としては前記側溝に接して

設置された本件縁壁をもって十分なものであったというべきであるから、

本件県道が通常有すべき安全性を欠いていたということはできず、

Dのした通常予測することのできない

無謀な行動に起因する本件事故について、

上告人が道路管理者としての責任を負うべき理由はない。

 

してみると、本件県道の管理につき上告人に瑕疵があるとした原審の判断は、

国家賠償法二条一項の解釈適用を誤った違法があり、

その違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、

この点の違法をいう論旨は理由がある。

 

そして、右に説示したところによれば、

前記確定事実の下においては、

被上告人らの請求は理由がないことに帰するから、

原判決を破棄し、被上告人らの各請求の一部を認容した

第一審判決中右請求認容にかかる上告人敗訴部分を

取り消した上、被上告人らの請求を棄却すべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


スポンサードリンク