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【判例】地方自治法151条の2第3項の規定に基づく職務執行命令裁判 (平成8年8月28日最高裁)地方自治法151条の2第3項の規定に基づく職務執行命令裁判

(平成8年8月28日最高裁)

事件番号  平成8(行ツ)90

 

最高裁判所の見解

一 署名等代行事務の機関委任事務該当性

 

1 私有財産を公共のために収用し、又は使用する権能は、

本来、国が有するものであるが、具体的にどのような要件、

手続の下に私有財産を収用し、又は使用し得るものとするのかについては、

これを定める法律の規定に従うべきものである。

 

土地収用法は、土地等を収用し、又は使用する主体を、

その権能を本来的に有する国とするのではなく、

同法三条各号に掲げる公共の利益となる事業(以下「公益事業」という。)の

用に供するために土地等を必要とする起業者とするとともに

(同法八条一項、一六条)、公共の利益の増進と

私有財産との調整を図るという観点から、

土地等の収用又は使用に関し、その要件、

手続等を定めるものである(同法一条)。

 

すなわち、同法は、公益事業の用右のような署名等代行事務の性質にかんがみれば、

右事務は、国の事務に当たるものと解するのが相当である。

 

このように、署名等代行事務が国の事務の性質を有するものであるとしても、

法律により、右事務の全部又は一部を地方公共団体の事務とすること、

すなわち、地方公共団体に右事務を団体委任することも可能である。

 

ところで、都道府県が処理する事務を例示する

地方自治法二条六項は、二号において、

「土地の収用に関する事務」を掲げているが、

右規定は、同条三項各号の例示を受けて、

市町村が処理する事務との関係において

都道府県が処理する事務の範囲を画する規定であり、

右の「土地の収用に関する事務」というのも、

同項一九号に例示された「法律の定めるところにより、

地方公共の目的のために動産及び不動産を使用又は収用する」事務を

受けた規定とみることができ、同号の文言に照らすならば、

同条六項二号は、都道府県が起業者として

土地を収用する場合において行うべき事務を都道府県の事務として

例示したものと解するのが相当である。

 

したがって、右規定を根拠として、

署名等代行事務が地方公共団体に団体委任された事務に当たると

解することはできないし、

他にそのように解する根拠となる規定は見当たらない。

 

他方、地方自治法別表第三第一号(百八)、

同法別表第四第二号(四十三)に都道府県知事又は

市町村長の権限に属する国の事務として

掲げられている各種の事務は、いずれも、

公益事業の用に供するための土地等の収用又は使用の事務の円滑な

遂行と私有財産権の保障との調整を図ることを目的とするものであって、

署名等代行事務とその基本的性質を同じくするものということができる。

 

以上のことからすると、土地収用法三六条五項は、

署名等代行事務を都道府県知事に

機関委任したものと解するのが相当である。

 

3 駐留軍用地特措法一四条は、

同法三条の規定による土地等の使用又は収用に関しては、

同法に特別の定めがある場合を除き、

土地収用法を適用するものとしており、

日本国に駐留するアメリカ合衆国の軍隊(以下「駐留軍」という。)の用に

供するための土地等の使用又は収用に関しても、

右1及び2に説示したところと別異に解する理由はないから、

駐留軍用地特措法一四条に基づき同法三条の規定による

土地等の使用又は収用に関して適用される場合における

土地収用法三六条五項所定の署名等代行事務も、

都道府県知事の権限に属する国の事務に当たるというべきである。

 

二 駐留軍用地特措法一四条に基づき

同法三条の規定による土地等の使用又は

収用に関して適用される土地収用法三六条五項所定の

署名等代行事務の主務大臣 駐留軍用地特措法は、

日米地位協定を実施するため、

駐留軍の用に供する土地等の使用又は

収用に関し規定することを目的とする(同法一条)。

 

これによれば、駐留軍用地特措法に基づく土地等の使用又は

収用に関する事務は、我が国の安全保障並びに

これと密接な関係を有する極東における国際の平和及び

安全の維持という国家的な利益にかかわる事務であるとともに、

アメリカ合衆国に対する施設及び区域の提供という、

日米安全保障条約に基づく我が国の国家としての

義務の履行にかかわる事務であるということができる。

 

このことに、駐留軍用地特措法五条により、

同法に基づく土地等の使用又は収用の認定の権限が

被上告人にあるものとされていることを併せ考えると、

同法に基づき、防衛施設局長が行う土地等の使用又は

収用の事務の円滑な遂行と私有財産権の保障との調整を図るための事務は、

建設省の所掌事務とされている「土地の使用及び収用に関する事務」

(建設省設置法三条三七号)に含まれるものと解することはできない。

 

そして、右事務がその他の省庁等のいずれかの

所掌事務に当たるとする法的根拠もないから、

右事務は、総理府設置法四条一四号の定めるところに従い

総理府が所掌する事務に当たるとするのが相当であり、

そのように解することが右事務の性質にもかなうものといえる。

 

したがって、駐留軍用地特措法一四条に基づき

同法三条の規定による土地等の使用又は収用に関して

適用される場合における土地収用法三六条五項所定の

署名等代行事務の主務大臣は、被上告人というべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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