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【判例】境界確定訴訟の提起による所有権に関する取得時効中断の効力が生じないものとされる場合 (平成元年3月28日最高裁)境界確定訴訟の提起による所有権に関する取得時効中断の効力が生じないものとされる場合

(平成元年3月28日最高裁)

事件番号  昭和58(オ)216

 

最高裁判所の見解

一般に、所有者を異にする相隣接地の一方の所有者甲が、

境界を越えて隣接地の一部を自己の所有地として占有し、

その占有部分につき時効により所有権を取得したと

主張している場合において、右隣接地の所有者乙が

甲に対して右時効完成前に境界確定訴訟を提起していたときは、

右訴えの提起により、右占有部分に関する所有権の

取得時効は中断するものと解されるが

(大審院昭和一四年(オ)第一四〇六号同一五年七月一〇日判決・

民集一九巻一二六五頁、最高裁昭和三四年(オ)第一〇九九号

同三八年一月一八日第二小法廷判決・

民集一七巻一号一頁参照)、土地所有権に基づいて

乙が甲に対して右占有部分の明渡を求める請求が

右境界確定訴訟と併合審理されており、判決において、

右占有部分についての乙の所有権が否定され、

乙の甲に対する前記明渡請求が棄却されたときは、

たとえ、これと同時に乙の主張するとおりに土地の境界が確定されたとしても、

右占有部分については所有権に関する取得時効中断の効力は

生じないものと解するのが相当である。

 

けだし、乙の土地所有権に基づく明渡請求訴訟の提起によつて

生ずる当該明渡請求部分に関する取得時効中断の効力は、

当該部分に関する乙の土地所有権が否定され右請求が棄却されたことによつて、

結果的に生じなかつたものとされるのであり、

右訴訟において、このように当該部分の所有権の乙への帰属に関する

消極的判断が明示的にされた以上、

これと併合審理された境界確定訴訟の関係においても、

当該部分に関する乙の所有権の主張は否定されたものとして、

結局、取得時効中断の効力は生じないものと解するのが、

境界確定訴訟の特殊性に照らし相当というべきであるからである。

 

これを本件についてみるに、前記の確定事実によれば、

上告人らは、Dが本件土地を昭和二九年一二月一〇日以降二〇年間にわたり

平穏公然に占有してきたとして、

取得時効による所有権取得を主張するものであるところ、

Eが右時効完成前の昭和四一年に提起した前訴において、

前記「ホ」・「ヘ」線を分筆前のa番bの土地と

a番cの土地との境界と確定するとともに、

本件土地の一部である本件土地部分について、

Dの一〇年の取得時効を肯定してEの所有権を否定し、

右部分につき土地所有権に基づく明渡請求を棄却すべき旨の

前訴確定判決がされたというのであるから、

前記の説示に照らし、前訴境界確定訴訟の提起による

取得時効中断の効力は、本件土地のうち

本件土地部分を除くその余の部分については生じているものの、

本件土地部分については生じていないものというべきである。

 

請求棄却の判決がされたことにより

取得時効中断の効力が発生しないとされるのは、

当該判決がされたことによるものであるから、

前訴におけるDの一〇年の取得時効を肯定した認定判断が

理由中のそれであつて原審を拘束するものでなく、

原審としては右取得時効を否定する判断に達したからといつて、

本件土地部分について前訴境界確定訴訟の提起による

時効中断の効力を肯定する理由とすることはできないものというべきである。

 

以上によれば、これと異なり、前記のような理由で、

前訴境界確定訴訟の提起によつて本件土地についての

Dの前記取得時効は中断しているとした原判決には、

本件土地部分に関する限り、法令の解釈適用を誤つた違法があり、

右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかというべきであるから、

論旨は、右の限度で理由があるものというべきである。

 

そうすると、原判決は、本件土地部分に係る部分について

上告人らの控訴を棄却した部分につき破棄を免れないが、

本件土地のうち本件土地部分を除くその余の部分についての原審の判断は、

結局正当として是認できるものというべきであるから、

この部分に関する論旨は理由がない。

 

そして、右破棄部分については、

上告人らの前記本訴請求の当否につき

更に審理を尽くさせる必要があるから、

右部分につき本件を原審に差し戻すのが相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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