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【判例】山林に係る事業所得の必要経費と財産増減法 (平成2年3月30日最高裁)山林に係る事業所得の必要経費と財産増減法

(平成2年3月30日最高裁)

事件番号  昭和62(あ)101

 

最高裁判所の見解

原判決によれば、同被告人の所得のうち山林の伐採、譲渡によるものは

事業所得に該当するというのであるが、

右所得金額の計算に当たっては、所得税法三七条二項に従い、

譲渡した山林の植林費、取得費、管理費、伐採費

その他その山林の育成又は譲渡に要した費用の額を

必要経費に算入する必要がある。

 

本件においては、逋脱所得金額の認定方法として

いわゆる財産増減法が用いられているところ、

右方法による場合には、山林を期首・期末の資産から除いたうえ、

当該年中に譲渡された山林に関して前年までに支出された経費につき、

期首資産の増加による調整を加え、

当該年中には譲渡されなかった山林に関して

同年中に支出された経費につき、

期末資産の増加による調整を加えるなどして、

右必要経費を控除した所得金額を算定しなければならない。

 

ところが、原判決は、右のような調整の必要性を考慮することなく、

右必要経費の算定方法は期末における残存立木のたな卸資産としての

評価方法と同一に帰着する旨判示し、

右のような調整をせずに逋脱所得の金額を認定した

第一審判決を結論において是認しているのであるから、

原判決は所得税法三七条二項の解釈を誤ったものといわなければならない。

 

しかしながら、記録によれば、同被告人は営林署等から

立木を買い入れて伐採し、

原木として譲渡することを主たる事業内容としており、

調整を要する必要経費の大部分を取得費、伐採費及び

運搬費が占めていたものと認められるところ、

本件で用いられた資産評価の方法によると、

当該年中に譲渡された山林に関して前年までに支出された費用のうち、

期首に存在した立木の取得費及び期首に山元など土場以外の場所に

存在した原木の取得費は、いずれも

その費用とほぼ同額の価値を有する右立木及び

原木として期首資産に含めて評価されており、また、

期首に土場に保管されていた原木の取得費、伐採費及び運搬費も、

それらの費用に見合う価値を有する右原木として

期首資産に含めて評価されているから、

期首資産の増加によって調整したのと

ほぼ同一の結果をもたらすことになる。

これと同様の理由により、当該年中には譲渡されなかった山林に関して

同年中に支出された費用のうち、期末に存在した

立木の取得費、期末に土場以外の場所に存在した

原木の取得費並びに期末に土場に保管されていた

原木の取得費、伐採費及び運搬費も、期末資産の増加によって

調整したのとほぼ同一の結果をもたらすことになる。

 

もっとも、土場に保管されていた原木の評価額は、

その取得費、伐採費及び運搬費のみでなく、

利潤の一部を含んでいる可能性があるものの、

記録によれば、期末の土場の在庫量は各年とも

期首の土場の在庫量より大幅に減少しており、

右利潤による期首資産の評価の増加分より

期末資産の評価の増加分の方が少なく、

所得金額の減少をもたらす方向に作用しているものと認められるから、

同被告人に不利益を及ぼすものではない。そこで、

本件において調整を要する費用として残るものは、

期首に土場以外の場所に存在した原木と期末に

土場以外の場所に存在した原木の各伐採費及び運搬費ということになるところ、

記録によれば、右のような原木は極めて少ないうえ、

期首資産の増加によって調整すべき右各費用と

期末資産の増加によって調整すべき右各費用の差は

僅かなものと認められる。

 

したがって、以上の各費用につき厳密な調整をすることなく

逋脱所得金額を認定したとしても、

この違法をもって原判決を破棄しなければ著しく

正義に反するものとは認められない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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