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【判例】損害賠償等請求住民訴訟事件 (平成25年3月28日最高裁)損害賠償等請求住民訴訟事件

(平成25年3月28日最高裁)

事件番号  平成23(行ヒ)452

 

この裁判は、

広域連合が土地を賃借する契約につき賃料額が私的鑑定において

適正とされた賃料額より高額であることを理由として

当該契約が違法でありその賃料の約定が無効であるとした

原審の判断に違法があるとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

(1) 地方自治法242条の2第1項4号に基づく被上告人の請求は,

本件各契約を締結した本件広域連合の長の判断が

同法2条14項及び地方財政法4条1項に

違反することを前提とするものであるところ,

地方公共団体の長がその代表者として

一定の額の賃料を支払うことを約して不動産を

賃借する契約を締結すること及び

その賃料の額を変更する契約を締結することは,

当該不動産を賃借する目的やその必要性,

契約の締結に至る経緯,契約の内容に影響を及ぼす社会的,

経済的要因その他の諸般の事情を

総合考慮した合理的な裁量に委ねられており,

当該契約に定められた賃料の額が鑑定評価等において

適正とされた賃料の額を超える場合であっても,

上記のような諸般の事情を総合考慮した上でなお,

地方公共団体の長の判断が裁量権の範囲を逸脱し又は

これを濫用するものと評価されるときでなければ,

当該契約に定められた賃料の額をもって

直ちに当該契約の締結が地方自治法2条14項等に反し

違法となるものではないと解するのが相当である。

 

前記事実関係等によれば,旧志摩郡においては,

各家庭から生ずるし尿の運搬距離を平準化し各町におけるし

尿くみ取り料金に格差が出ないようにするなどのため,

各町にし尿中継槽が設けられていたのであり,

各町の合併後間もない本件賃貸借契約締結当時においても同様に,

本件広域連合が旧志摩町の区域内にし尿中継槽を

設置する必要性があったということができる。

 

そして,本件広域連合としては,

本件貯留槽は新たなし尿中継槽が完成するまでの

期間に限定して借りたものであり,また,

旧大王町の区域内のし尿中継槽において

同区域内から生ずるし尿等に加えて旧志摩町の

区域内で生ずるし尿等の積替え及び保管を継続的に行うことは

困難であったと考えられるから,

旧し尿中継槽が閉鎖されてから2年以上経過した

本件賃貸借契約締結当時において,

速やかに新たなし尿中継槽の用地を

確保する必要性があったというべきである。

 

そして,そもそも旧志摩町の区域内の旧し

尿中継槽は周辺住民からの強い苦情を受けて

廃止されたものであり,同区域内で新たなし

尿中継槽の用地を確保することは

相当困難であったと考えられるところ,

他に具体的な候補地の存在もうかがわれない中で,

本件広域連合がA協業組合から反対されて

鑑定評価はしなかったものの前記2(4)の相応の交渉を経て

本件賃貸借契約を締結するに至った経緯それ自体が

不当なものであったとはいえず,また,

本件私的鑑定において適正とされた賃料の額は,

上記のようなし尿中継槽の用地を確保するという

本件土地を賃借する目的やその必要性等の事情を考慮して

算出されたものでないことは明らかである。

 

そうすると,旧志摩町の区域内にし尿中継槽の用地を確保するという

本件土地を賃借する目的やその必要性,

契約の内容に影響を及ぼす社会的,経済的要因としての

当該施設の性質に伴う用地確保の緊急性や

困難性といった事情の有無にかかわらず,

本件賃貸借契約において鑑定評価を経ずに

定められた賃料の額及びこれを一部減額した

本件変更契約所定の賃料の額が本件私的鑑定において

適正とされた賃料の額と比較して高額であることをもって直ちに,

本件各契約を締結した本件広域連合の長の判断が

その裁量権の範囲を逸脱し又は

これを濫用するものであったということはできない

 

(2) 次に,契約に基づく債務の履行として行われる

公金の支出について地方自治法242条の2第1項1号に基づく

差止めを請求することができるのは,

当該契約が私法上無効である場合に限られるところ

(最高裁昭和56年(行ツ)第144号同62年5月19日

第三小法廷判決・民集41巻4号687頁参照),

旧志摩町の区域内で新たにし尿中継槽の用地を確保するために

本件土地を賃借する必要性,当該施設の性質に伴う

用地確保の緊急性や困難性といった上記の諸事情に加え,

本件賃貸借契約に定められた賃料の額が当事者間で

相応の交渉を経た上で合意されたものであり,

本件広域連合の議会において

その予算が承認されていたことなどからすると,

本件私的鑑定において賃借の目的等を考慮することなく

適正とされた賃料の額と単純に比較して,

本件各契約の賃料の約定が公序良俗に反するものとはいえず,また,

本件各契約を締結した本件広域連合の長の

判断に裁量権の範囲の著しい逸脱又は

その濫用があり,本件各契約を無効としなければ

地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の趣旨を

没却する結果となる特段の事情が認められる

(最高裁平成17年(行ヒ)第304号同20年1月18日

第二小法廷判決・民集62巻1号1頁参照)と

直ちにいうこともできないことは明らかである。

 

5 以上によれば,前記2の事実関係等から直ちに,

本件各契約が違法に締結されたものであり

その賃料の約定が私法上無効であるとして,

地方自治法242条の2第1項4号に基づく

被上告人の請求の一部及び同項1号に基づく

被上告人の請求を認容した原審の判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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