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【判例】敷金返還請求権を目的とする質権設定についての第三債務者の異議をとどめない承諾に要素の錯誤があるとされた事例 (平成8年6月18日最高裁)敷金返還請求権を目的とする質権設定についての第三債務者の異議をとどめない承諾に要素の錯誤があるとされた事例

(平成8年6月18日最高裁)

事件番号  平成4(オ)874

 

最高裁判所の見解

質権設定についての第三債務者の承諾は、

債権者のために債務者の第三債務者に対する債権を目的として

質権が設定された事実についての認識を表明する行為であって、

いわゆる観念の通知の性質を有するものであり、

これについても意思表示の錯誤に関する

民法の規定が類推適用されると解される。

 

原審の確定した事実関係によれば、上告人は、

敷金返還請求権に対する質権設定を承諾するに当たり、

本件特約について異議をとどめて承諾をするつもりであったが、

その承諾書を持参したFが本件特約の記載されていない

旧契約書を被上告人に交付したため、

異議をとどめない承諾がされる結果となったものである。

 

すなわち、右の承諾については、上告人の認識と

被上告人に対する表示との間に質権の目的である

敷金返還請求権に本件特約が付されていたか否かの点に関して

不一致があったものであり、上告人に錯誤があったものである。

 

ところで、本件特約は、前記一3のとおり、

賃借人であるDの都合により五年以内に本件賃貸借契約を

解除する場合であれば一〇〇パーセント、

八年以内にこれを解除する場合であれば

八〇パーセントというように、敷金から控除される

金額の割合を定めるものであって、

返還の対象となる敷金の額と密接なかかわりを有する約定である。

 

そうすると、右の錯誤は、質権の目的である

債権の重要な属性に関する錯誤であるから

承諾をするに至った動機における錯誤ではなく、

承諾の内容自体に関する錯誤であるとみるのが相当である。

 

そして、本件特約の付されていない敷金返還請求権を目的として

質権を設定するというのであれば、社会通念に照らして、

上告人が質権設定を承諾しなかったことが容易に推察されるから、

右の錯誤は民法九五条にいう

要素の錯誤に当たるものというべきである。

 

四 以上と異なる原審の判断には

民法九五条の解釈適用を誤った違法があり、

右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり、

上告人のその余の論旨について判断するまでもなく、

原判決中、上告人敗訴の部分は破棄を免れない。

 

そして、本件については、その余の点について

更に審理を尽くさせる必要があるから、

これを原審に差し戻すこととする。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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