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【判例】新株の払込みを仮装のものとして公正証書原本不実記載罪の成立が認められた事例 (平成3年2月28日最高裁)新株の払込みを仮装のものとして公正証書原本不実記載罪の成立が認められた事例

(平成3年2月28日最高裁)

事件番号  昭和62(あ)1283

 

最高裁判所の見解

原判決の是認する第一審判決の認定によれば、

被告人両名らの合意により、株式会社A(以下「A」という。)が

第三者割当増資の方法により新株の発行(発行価額一株二五〇円、

払込期日昭和五九年二月二五日)を行った際に、

発行総株式数一二八〇万株のうち六四〇万株について、

以下の方法で払込みが行われたことが認められる。

 

1 A商事株式会社(以下「A商事」という。)の

引受分二〇〇万株のうちの一二〇万株については、

Aは、昭和五九年二月二三日、A振出の額面三億円及び

二億円の手形二通をB株式会社に交付し、

Bは、同月二四日、東京都C信用金庫a支店で割引きを受け、

割引金のうち三億円をAに交付し(二億円は同支店の要求で

B名義の通知預金とされた。)、A商事は、

これをAから借り受け、申込証拠金として

D銀行b支店のAの別段預金口座に入金し、

Aは、同月二五日、同支店から右三億円についての

株式払込金保管証明書を取得した後、同月二七日、

右三億円を右口座から当座預金口座に振り替え、

同月二九日、右額面三億円の手形の決済に充てた。

 

2 E株式会社の引受分四〇〇万株については、

Eは、同年二月二四日、Aの連帯保証の下に

株式会社Fから一〇億円を借り受け、申込証拠金として

G銀行c支店のアイデンの別段預金口座に入金し、

Aは、同月二五日、同支店から株式払込金保管証明書を取得した後、

同月二七日、右一〇億円を右口座から普通預金口座に振り替え、

EのFに対する右一〇億円の借入金債務の代位弁済に充てた。

 

3 A商事の引受分の前記残りの八〇万株については、

Aが前記1のB名義の二億円の通知預金証書を担保に提供し、

A商事がFの代表取締役の第一審相被告人H個人から

二億円を借り受け、2と同様の経過をたどって、

Aは、申込証拠金として払い込まれた二億円を

A商事のHに対する右二億円の借入金債務の代位弁済に充てた。

 

4 A商事が株式会社Iの名義で引き受けた四〇万株については、

A商事は、同年二月二四日、大和眼行の連帯保証の下に

J海上保険株式会社から一億円を借り受け、

申込証拠金としてD銀行b支店のAの別段預金口座に入金し、

Aは、同月二五日、同支店から

株式払込金保管証明書を取得した後、

同月二七日、右一億円を右口座から普通預金口座に振り替えた上、

小切手で引き出して直ちに同支店の定期預金に預け入れ、

これにD銀行の質権が設定された。

 

前記認定によれば、右1ないし3の各払込は、

いずれもAの主導の下に行われ、

当初から真実の株式の払込みとして会社資金を確保させる意図はなく、

名目的な引受人がA自身あるいは他から短期間借り入れた金員をもって

単に払込みの外形を整えた後、

Aにおいて直ちに右払込金を払い戻し、

貸付資金捻出のために使用した手形の決済あるいは

借入金への代位弁済に充てたものであり、

右4の払込みも、同様の意図に基づく仮装の払込みであって、

A名義の定期預金債権が成立したとはいえ、

これに質権が設定されたため、

A商事がJ海上保険に対する借入金債務を弁済をしない限り、

Aにおいてこれを会社資金として使用することが

できない状態にあったものであるというのであるから、

1ないし4の各払込みは、いずれも株式の払込みとしての

効力を有しないものといわなければならない

(最高裁昭和三五年(オ)第一一五四号同三八年一二月六日第二小法廷判決・

民集一七巻一二号一六三三頁参照)。

 

もっとも、本件の場合、AがEに対する一〇億円及び

A商事に対する五億円の各債権並びに

一億円の定期預金債権を有している点で典型的な

いわゆる見せ金による払込みの場合とは異なるが、

右各債権は、当時実質的には全く

名目的な債権であったとみるべきであり、また、

右定期預金債権は、これに質権が設定されているところ、

A商事においてJ海上保険に債務を弁債する能カがなかったのであるから、

これまたAの実質的な資産であると評価することができないものである。

 

したがって、公正証書原本不実記載の罪の成立を

認めた原判決の判断は正当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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