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【判例】新聞記事による名誉殿損によって損害の発生する時期 (平成9年5月27日最高裁)新聞記事による名誉殿損によって損害の発生する時期

(平成9年5月27日最高裁)

事件番号  平成8(オ)220

 

最高裁判所の見解

1 不法行為の被侵害利益としての名誉(民法七一〇条、七二三条)とは、

人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について

社会から受ける客観的評価のことであり

(最高裁昭和五六年(オ)第六〇九号同六一年六月一一日大法廷判決・

民集四〇巻四号八七二頁参照)、名誉毀損とは、

この客観的な社会的評価を低下させる行為のことにほかならない。

 

新聞記事による名誉毀損にあっては、

これを掲載した新聞が発行され、

読者がこれを閲読し得る状態になった時点で、

右記事により事実を摘示された人の客観的な

社会的評価が低下するのであるから、

その人が当該記事の掲載を知ったかどうかにかかわらず、

名誉毀損による損害はその時点で発生していることになる。

 

被害者が損害を知ったことは、不法行為による

損害賠償請求権の消滅時効の起算点(同法七二四条)としての

意味を有するにすぎないのである。

 

したがって、上告人は、本件記事の掲載された新聞が発行された時点で、

これによる損害を被ったものというべきである。

 

2 新聞の発行によって名誉毀損による損害が生じた後に

被害者が有罪判決を受けたとしても、

これによって新聞発行の時点において

被害者の客観的な社会的評価が低下したという

事実自体に消長を来すわけではないから、

被害者が有罪判決を受けたという事実は、

これによって損害が消滅したものとして、

既に生じている名誉毀損による損害賠償請求権を消滅させるものではない。

 

このように解することが刑事裁判制度の役割を

否定することにつながるものでないことは、

いうまでもないところである。

 

ただし、当該記事が摘示した

事実と有罪判決の理由とされた事実との間に

同一性がある場合に、被害者が有罪判決を受けたという事実を、

名誉毀損行為の違法性又は行為者の故意若しくは

過失を否定するための事情として

斟酌することができるかどうかは、別問題である。

 

また、名誉毀損による損害について

加害者が被害者に支払うべき慰謝料の額は、

事実審の口頭弁論終結時までに生じた諸般の事情を

斟酌して裁判所が裁量によって算定するものであり、

右諸般の事情には、被害者の品性、徳行、名声、信用等の

人格的価値について社会から受ける客観的評価が

当該名誉毀損以外の理由によって更に低下したという事実も

含まれるものであるから、名誉毀損による損害が生じた後に

被害者が有罪判決を受けたという事実を斟酌して

慰謝料の額を算定することが許される。

 

3 これを本件について見ると、

本件記事が摘示した上告人に関する事実と上告人が

受けた前記有罪判決の理由とされた事実とは、

同種の事実であるということはできても、

その間に同一性があるということはできない。

 

したがって、本件記事が掲載された新聞の発行によって

上告人の名誉が毀損された後に

上告人が前記の有罪判決を受けたという事実は、

これを慰謝料の額の算定要素として

斟酌することは格別として、

上告人の被った損害を消滅させるものではなく、

本件記事による名誉毀損を理由とする

上告人の被上告人に対する損害賠償請求権の成否を左右するものではないというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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