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【判例】有効投票と解すべきか否か ( 平成4年7月10日最高裁)有効投票と解すべきか否か

( 平成4年7月10日最高裁)

事件番号  平成4(行ツ)15

 

最高裁判所の見解

公選法六七条後段の規定の趣旨に徴すれば、

投票の記載から選挙人の意思が判断できるときは、

できる限りその投票を有効とするように解すべきであり、

投票に記載された文字に誤字、脱字や明確を欠く点があり、

投票の記載が候補者の氏名と一致しない場合であっても、

その記載された文字を全体的に考察することによって

選挙人がどの候補者に投票する意思をもって投票をしたかを判断し得るときには、

右投票を当該候補者に対する有効投票と認めるのが相当である。

 

そして、投票を二人の候補者氏名を混記したものとして

無効と解するのは、当該投票の記載がいずれの

候補者氏名を記載したのか全く判断し難い場合に

限られるものというべきであって、

そうでない場合には、いずれか一方の候補者の氏名に

最も近い記載のものはこれを当該候補者に対する投票と認め、

合致しない記載はこれを誤った記憶によるものか、

又は単なる誤記によるものと解すべきである

(最高裁昭和三一年(オ)第一〇二四号

同三二年九月二〇日第二小法廷判決・

民集一一巻九号一六二一頁、同昭和四五年(行ツ)第五二号

同四五年一〇月二三日第二小法廷判決・裁判集民事一〇一号一七九頁、

同昭和四九年(行ツ)第五三、五四号同四九年一二月二三日第二小法廷判決・

裁判集民事一一三号七四九頁参照)。

 

これを本件についてみるのに、本件係争票の記載は、

片仮名、平仮名が混じり、字も稚拙であるが、

第二字ないし第六字は比較的明瞭であり、

「モリいワヲ」と記載したものと判読し得るのに対し、

第一字の記載は判読が相当に困難であり、

これを「オ」と記載したものと解することは到底できないけれども、

強いて判読すれば、「ヲ」と記載したものと解する余地がある。

 

もっとも、右第一字の記載と「ヲ」と判読し得る

第六字の記載とを比較すると、第一字の縦線が

上の横線の上方に突き出たところから直線のように書き始められ、

途中から極端に左に曲げられているのに対し、

第六字の縦線は上の横線の下から書き始められ、

ゆるやかな左曲がりの曲線となっていること、

第一字の二本の横線の左端が第二字の「モ」の

第二画の横線の左端と同様鍵型になっているのに対し、

第六字の二本の横線の左端は鍵型になっていないことなどの

字形上の顕著な相違に照らすと、第一字は、

これを「ヲ」と記載したものと断定することはできず、

「モ」等の字の書き損じであることの可能性も

否定し得ないものというべきである。

 

そうすると、本件係争票は、第一字は強いて判読すれば

「ヲ」であるが、書き損じの可能性もあり、

第二字ないし第六字は「モリいワヲ」と記載したものと認められる。

 

本件係争票の右記載のうち、下位の三文字が「いわお」という名を

記載したものであることは明らかであり、

本件選挙の候補者中で「いわお」名を有する者は

参加人森長巖(本件選挙での呼称は「森長イワオ」として届け出た。)と

藤本巌の二名であるから、右下位三文字の記載からは、

右の二名の候補者のいずれかに投票する意思をもって

右記載がされたものと推測することができる。

 

そして、本件係争票の上位三文字のうち明瞭に判読し得る二文字が

「モリ」であり、参加人森長巖の氏の「もりなが」と

共通する部分があるのに対し、候補者藤本巌の氏の「ふじもと」とは

全く類似性がないことを考慮すると、本件係争票の記載は、

これを全体的に考察して、参加人森長巖の氏名「もりながいわお」に

最も近似しているものというべきであり、結局、

本件係争票は、同人に投票する意思をもって「モリナガイワオ」と

書こうとして、誤記、脱字をしたものと認めるのが相当であり、

参加人森長巖に対する有効投票と解すべきである。

 

なお、本件係争票の上位の三文字が「ヲモリ」と

記載されたものとすれば、候補者大森治の氏の「おおもり」と、

称呼上類似する面があるが、同候補者の名の「おさむ」と

右下位三文字の「いワヲ」の記載とが全く類似性を有しないことに徴すると、

本件係争票の記載を全体的に考察して、同候補者に対する

投票意思を認める余地はないものというべきであり、

本件係争票を複数の候補者氏名を混記したものとして

無効と解するのは相当ではない。

 

三 してみると、本件係争票を無効投票と判断した原判決には、

法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法は

判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、

論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

 

そして、本件におけるその余の係争票(二票)を

参加人森長巖に対する有効投票であるとした原審の認定判断は、

原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認し得るから、

結局、参加人森長巖の得票数は二一八・三八六票となり、

被上告人の得票数二一八票を上回ることになるので、

上告人がした本件裁決に被上告人主張の違法はなく、

その取消し等を求める被上告人の本訴請求は理由がないものとして、

これを棄却すべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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