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【判例】民法416条,民法420条,民法557条 (平成9年2月25日最高裁) 

民法416条,民法420条,民法557条

(平成9年2月25日最高裁)

事件番号  平成6(オ)669

 

この裁判では、

不動産売買契約において義務不履行の場合の手付金の不返還又は

倍額支払の定めと共に特別の損害を被った当事者は

損害賠償請求ができる旨を定めた約定の意義について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

原審の確定した九条二項ないし四項の文言を全体としてみれば、

右各条項は、相手方の債務不履行の場合に、特段の事情がない限り、

債権者は、現実に生じた損害の証明を要せずに、

手付けの額と同額の損害賠償を求めることができる旨を規定するとともに、

現実に生じた損害の証明をして、

手付けの額を超える損害の賠償を求めることも

できる旨を規定することにより、

相手方の債務不履行により損害を被った債権者に対し、

現実に生じた損害全額の賠償を得させる趣旨を定めた規定と解するのが、

社会通念に照らして合理的であり、

当事者の通常の意思にも沿うものというべきである。

 

すなわち、特段の事情がない限り、九条四項は、

債務不履行により手付けの額を超える損害を被った債権者は、

通常生ずべき損害であると特別の事情によって生じた損害であるとを問わず、

右損害全額の賠償を請求することが

できる旨を定めたものと解するのが相当である。

 

もっとも、九条四項は、債権者が手付けの額を超えて

その賠償を求めることのできる損害を

「特別の損害」という文言で規定しているが、

前記事実関係によれば、九条二項ないし四項は、

社団法人兵庫県宅地建物取引業協会の制定した定型書式に

あらかじめ記載されていたものであるところ、

右定型書式が兵庫県内の不動産取引において

広く使用されることを予定して

作成されたものとみられることにもかんがみると、

右定型書式の制定に際して、右「特別の損害」の文言を

民法四一六条二項にいう特別の事情によって

生じた損害をいうものとして記載したとは、

通常考え難い上、右文言を特別の事情によって

生じた損害と解することにより、

相手方の債務不履行の場合に、債権者に、

通常生ずべき損害については手付けの額を超える

損害の賠償請求を認めず、特別の事情によって生じた損害に限って

別途その賠償請求を認めることの合理性も、

一般的に見いだし難いところであり、

仮に契約当事者間において特別の事情によって生じた損害に限って

手付けの額の賠償とは別にその賠償を認める趣旨の約定をするとすれば、

「特別の事情によって生じた損害」と明記するなど、

その趣旨が明確になるよう表現上の工夫をするのが

むしろ通常であると考えられる。

 

しかるところ、前記のとおり、九条四項は、

債権者が手付けの額を超えてその賠償を求めることのできる損害を単に

「特別の損害」という文言で規定しているにすぎない上、

前記事実関係によれば、本件契約の当事者間において

契約締結時に右各条項の意味内容について

特段の話合いが持たれた形跡はないというのであるから、

右文言を特別の事情によって

生じた損害をいうものと解するのは相当ではなく、

他に同条四項の趣旨を右に述べたところと

別異に解すべき特段の事情もないというべきである。

 

そうであるとすれば、本件契約においても、

九条四項は、相手方の債務不履行により債権者が

手付けの額を超える損害を被った場合には、

通常生ずべき損害であると特別の事情によって

生じた損害であるとを問わず、債権者は右損害全額の賠償を

求することができる旨を定めた約定と解するのが相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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