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【判例】物上保証人と求償権の事前行使の可否 (平成2年12月18日最高裁)物上保証人と求償権の事前行使の可否

(平成2年12月18日最高裁)

事件番号  平成2(オ)801

 

最高裁判所の見解

債務者の委託を受けてその者の債務を担保するため

抵当権を設定した者(物上保証人)は、

被担保債権の弁済期が到来したとしても、

債務者に対してあらかじめ求償権を

行使することはできないと解するのが相当である。

 

けだし、抵当権については、民法三七二条の規定によって

同法三五一条の規定が準用されるので、

物上保証人が右債務を弁済し、

又は抵当権の実行により右債務が消滅した場合には、

物上保証人は債務者に対して求償権を取得し、

その求償の範囲については保証債務に関する規定が

準用されることになるが、右規定が債務者に対して

あらかじめ求償権を行使することを許容する根拠となるものではなく、

他にこれを許容する根拠となる規定もないからである。

 

なお、民法三七二条の規定によって抵当権について

準用される同法三五一条の規定は、

物上保証人の出捐により被担保債権が消滅した場合の

物上保証人と債務者との法律関係が保証人の弁済により

主債務が消滅した場合の保証人と主債務者との

法律関係に類似することを示すものであるということができる。

 

ところで、保証の委託とは、

主債務者が債務の履行をしない場合に、

受託者において右債務の履行をする責に

任ずることを内容とする契約を

受託者と債権者との間において締結することについて

主債務者が受託者に委任することであるから、

受託者が右委任に従った保証をしたときには、

受託者は自ら保証債務を負担することになり、

保証債務の弁済は右委任に係る事務処理により

生ずる負担であるということができる。

 

これに対して、物上保証の委託は、

物権設定行為の委任にすぎず、

債務負担行為の委任ではないから、

受託者が右委任に従って抵当権を設定したとしても、

受託者は抵当不動産の価額の限度で責任を負担するものにすぎず、

抵当不動産の売却代金による被担保債権の消滅の有無及び

その範囲は、抵当不動産の売却代金の配当等によって

確定するものであるから、求償権の範囲は

もちろんその存在すらあらかじめ確定することはできず、また、

抵当不動産の売却代金の配当等による被担保債権の消滅又は

受託者のする被担保債権の弁済をもって

委任事務の処理と解することもできないのである。

 

したがって、物上保証人の出捐によって債務が消滅した後の求償関係に

類似性があるからといって、右に説示した相違点を無視して、

委託を受けた保証人の事前求償権に関する

民法四六〇条の規定を委託を受けた物上保証人に

類推適用することはできないといわざるをえない。

 

そうすると、右と同旨の見解に立って、

上告人の請求を棄却した原審の判断は正当として是認することができ、

論旨は採用することができない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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