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【判例】特許請求の範囲 (平成3年3月19日最高裁)特許請求の範囲

(平成3年3月19日最高裁)

事件番号  昭和62(行ツ)109

 

最高裁判所の見解

一 原審は、本件特許出願の願書に添付した

明細書の特許請求の範囲の記載が

「目的物Oと係合させられるように各々適合させられた

複数の一緒に固定された取付け具から成るクリップであって、

該取付け具の各々が目的物貫通部分2と、拡大部分4と、

該両部分を結合している該貫通部分2から伸長した細長い区分材6と、

該貫通部分2を相互に平行的に間隔を置いて

結合している切断されうる部材8、10とから成るクリップにおいて、

該拡大部分間に介在してそれらを結合している容易に

切断されうる固定部材22を備え、

該固定部材は該切断されうる部材より隣接する

該拡大部分がねじり力により相互に手作業で

分離されうる程充分に弱いことを特徴とするクリップ」

であること等を基礎として、

右特許請求の範囲の記載どおりに本件発明の要旨を認定した上で、

(一) 本件明細書の発明の詳細な説明の項の記載を参酌すると、

固定部材は各取付部材の拡大部分間に介在して

それらを結合するものであるが、

取付機具(ガン)を用いて目的物に取付具を取り付ける際の

人の手による一連の連続的動作によって

生じるねじり力等の力によって容易に切断し得る程度に

弱いものを指すものと認められ、したがって、

本件発明の特許請求の範囲にいう

固定部材の構成は叙上認定の趣旨に解すべきであり、

そのほかには、その素材、形状、寸法等について

これを具体的に限定する記載はないから、

右要件を具備するものであれば、

すべて固定部材に包含される、

(二) 本件明細書の発明の詳細な説明の項及び図面には、

固定部材として固化した接着剤(接着層)を使用した実施例に

関する記載がある、

(三) 接着層の果たす作用効果は他の固定部材と差異がないとして、

本件発明の特許請求の範囲の「固定部材」

との記載には固化した接着剤(接着層)を

含むものであると認定判断した。

 

二 ところで、上告代理人提出の

特許庁昭和五八年審判第六九〇二号事件審決謄本及び

本件記録によれば、本件特許については、

上告人の訂正審判請求に基づき、原審口頭弁論終結後の

昭和六二年三月三一日、本件明細書及び図面から

接着層に関する第12図及び第13図を削除し、

併せて発明の詳細な説明の右図面に関連する説明部分を

削除する旨の訂正を、

特許法一二六条一項三号の明瞭でない記載の釈明として

認める旨の審決がされ、右審決謄本が同年五月二〇日上告人に送達され、

右審決が確定したことが認められる。

 

右審決には、明瞭でない記載の釈明に相当するものとして

上告人の申立てを認める旨の記載があるが、

上告人は明瞭でない記載の釈明又は

特許請求の範囲の減縮としての

訂正審判を申し立てたものであり、また、

右審決も、同条一項一号の特許請求の範囲の減縮を

目的とする訂正審判請求を認めるための要件である

同条三項に規定する訂正後における

特許請求の範囲に記載されている事項により

構成される発明が特許出願の際独立して

特許を受けることができるものであったか否かについても

検討を加えた上で、上告人の本件訂正審判請求が

右要件を具備している旨の判断をもしている。

 

原審は、本件明細書の接着剤(接着層)に関する

発明の詳細な説明の項の記載や図面などを参酌して、

固定部材には接着剤(接着層)が

含まれるものと認定判断したものであり、

原審の右認定判断は、特許請求の範囲の記載文言の

技術的意義が一義的に明確とはいえない場合の

発明の要旨の認定の手法によったものとして首肯し得るものであるが、

訂正を認容する審決の確定により、

特許請求の範囲の記載文言自体が訂正されたものではないけれども、

接着剤(接着層)に関する記載がすべて

明細書及び図面から削除されたことによって、

出願時に遡って、本件明細書の特許請求の範囲の

固定部材に接着剤(接着層)が含まれると解釈して

本件発明の要旨を認定する余地はなくなったものと

解するのが相当である。

 

三 したがって、本件特許につき訂正を認容する審決が

確定したことにより、

本件発明の特許請求の範囲の固定部材の構成は、

出願の当初に遡ってこれに接着剤(接着層)を含まないものに

減縮されたものと認められるから、

原判決の基礎となった行政処分は後の

行政処分により変更されたものであり、

原判決には民訴法四二〇条一項八号所定の事由が

存するといわなければならない。

 

このような場合には、判決に影響を及ぼすことの

明らかな法令の違背があったものとして原判決を破棄し、

更に審理を尽くさせるため事件を

原審に差し戻すのが相当である

(最高裁昭和五八年(行ツ)第一二四号同六〇年五月二八日第三小法廷判決・

裁判集民事一四五号七三頁参照)。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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