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【判例】留置権者が留置物の一部を債務者に引き渡した場合における被担保債権の範囲 (平成3年7月16日最高裁)留置権者が留置物の一部を債務者に引き渡した場合における被担保債権の範囲

(平成3年7月16日最高裁)

事件番号  昭和63(オ)1572

 

最高裁判所の見解

1 民法二九六条は、留置権者は債権の全部の弁済を受けるまで

留置物の全部につきその権利を行使し得る旨を規定しているが、

留置権者が留置物の一部の占有を喪失した場合にも

なお右規定の適用があるのであって、この場合、

留置権者は、占有喪失部分につき留置権を失うのは格別として、

その債権の全部の弁済を受けるまで留置物の残部につき

留置権を行使し得るものと解するのが相当である。

 

そして、この理は、土地の宅地造成工事を請け負った債権者が

造成工事の完了した土地部分を順次債務者に

引き渡した場合においても妥当するというべきであって、

債権者が右引渡しに伴い宅地造成工事代金の一部につき

留置権による担保を失うことを承認した等の特段の事情がない限り、

債権者は、宅地造成工事残代金の全額の支払を受けるに至るまで、

残余の土地につきその留置権を

行使することができるものといわなければならない。

 

2 これを本件についてみるのに、前記事実関係によれば、

上告人は、本件造成地の工事残代金の全額の支払を受けるまで、

本件造成地の全部につき留置権を行使し得るところ、

本件土地は本件造成地の一部で、

上告人はDから本件工事代金中一三〇〇万円の支払を

受けていないというのであるから、

右の特段の事情の存しない本件において、

上告人は、Dから残代金一三〇〇万円全額の支払を受けるに至るまで、

本件土地を留置し得るものというべきである。

 

3 そうすると、被上告人の請求は、上告人がDから

一三〇〇万円の支払を受けるのと引換えに

本件土地上の本件建物を収去して

その敷地の明渡しを求める限度で認容し、

その余を棄却すべきものである。以上と異なる原判決には、

民法二九六条の解釈適用を誤った違法があり、

右違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

これと同旨をいう論旨は理由があり、

原判決はこの点において破棄を免れず、

第一審判決は右の趣旨に変更すべきものである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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