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【判例】租税特別措置法(昭和63年法律第109号による改正前のもの)26条1項に基づくいわゆる概算経費 (平成2年6月5日最高裁)租税特別措置法(昭和63年法律第109号による改正前のもの)26条1項に基づくいわゆる概算経費

(平成2年6月5日最高裁)

事件番号  昭和63(行ツ)152

 

最高裁判所の見解

措置法二六条一項は、医師又は歯科医師が

社会保険診療報酬を有する場合において、

事業所得金額の計算上、右報酬に係る必要経費としては、

所得税法三七条一項等に基づく実額経費によることなく、

右報酬に一定の標準率を乗じて算出する概算経費とする旨を規定し、

措置法二六条三項は、同条一項の規定は、

確定申告書に同項の規定により

事業所得金額を計算した旨の記載がない場合には、

適用しないと規定している。

 

したがって、納税者である医師又は歯科医師が確定申告書において

同項の規定により事業所得金額を計算した旨の記載をしていない場合でない限り、

換言すれば、納税者である医師又は

歯科医師が確定申告書において同項の規定により

事業所得金額を計算した旨の記載をしている場合

(すなわち、概算経費選択の意思表示をしている場合)には、

同項が適用され、概算経費が事業所得金額の計算上控除されるべき

社会保険診療報酬の必要経費となるのである。

 

そして、この場合、実額経費の金額が概算経費の

金額を上回っているかそれとも下回っているかということは、

同項の適用を左右するものではなく、

仮に実額経費の金額が概算経費の金額を上回っている場合でも、

右概算経費が国税に関する法律の規定に基づく

社会保険診療報酬の必要経費となるのである

(最高裁昭和六〇年(行ツ)第八一号同六二年一一月一〇日第三小法廷判決・

裁判集民事一五二号一五五頁参照)。

 

しかしながら、歯科医師の事業所得金額の計算上

その診療総収入から控除されるべき必要経費は、

自由診療収入の必要経費と社会保険診療報酬の

必要経費との合計額であるところ、

本件においては、診療経費総額を自由診療収入分と

社会保険診療報酬分に振り分ける計算過程において、

診療総収入に対する自由診療収入の割合を出し、

これを診療経費総額に乗じて自由診療収入分の必要経費を算出し、

これを診療経費総額から差し引いて社会保険診療報酬の

実際の必要経費(実額経費)を算出すべきところ、

誤って社会保険診療報酬に対する自由診療収入の割合を出し、

これを診療経費総額乗じて自由診療収入分の必要経費を算出し、

これを診療経費総額から差し引いて実額経費を算出したため、

自由診療収入分の必要経費を正しく計算した場合よりも多額に、

実額経費を正しく計算した場合よりも少額に算出してしまい、

そのため右実額経費よりも概算経費の方が有利であると判断して

概算経費選択の意思表示をしたというのであるから

(なお、本件記録によれば、右の誤りは本件確定申告書に

添付された書類上明らかである。)、

右概算経費選択の意思表示は錯誤に基づくものであり、

上告人の事業所得金額の計算上その診療総収入から控除されるべき

必要経費の計算には誤りがあったというべきである。

 

ところで、国税通則法一九条一項一号によれば、

確定申告に係る税額に不足額があるときは

修正申告をすることができるところ、本件においては、

確定申告に係る自由診療収入の必要経費の計算の誤りを正せば、

必然的に事業所得金額が増加し、

確定申告に係る税額に不足額が生ずることになるため、

修正申告をすることができる場合に当たることになる。

 

そして、右修正申告をするに当たり、

修正申告の要件を充たす限りにおいては

(すなわち、確定申告に係る税額を増加させる限りにおいては)、

確定申告における必要経費の計算の誤りを是正する一環として、

錯誤に基づく概算経費選択の意思表示を撤回し、

所得税法三七条一項等に基づき実額経費を

社会保険診療報酬の必要経費として

計上することができると解するのが相当である。

 

本件修正申告において、上告人は、

自由診療収入の必要経費を確定申告に係る七五一万五五五二円から

五六〇万一五〇二円に減額し、社会保険診療報酬の必要経費を

実額経費である一九二六万四七八八円に改め、

確定申告に係る必要経費の総額二五五四万一一〇一円を

二四八六万六二九〇円に減額したものであるから、

税額を増加させるものであり、修正申告の要件を充たし、

概算経費選択の意思表示の撤回が有効になされたものとして、

本件修正申告は適法というべきである。

 

したがって、本件修正申告における

概算経費選択の意思表示の撤回を認めず、

自由診療収入の必要経費については

修正申告による金額としながら、

社会保険診療報酬の必要経費については

確定申告における概算経費の金額とすべきであるとした

本件課税処分は違法であるところ、

これを適法であるとした原判決には、

法律の解釈適用を誤った違法があり、

右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、

論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

 

そして、以上に述べたところからすれば、

本件課税処分の取消しを求める上告人の本訴請求は正当として

認容すべきものであるから、これと同旨の第一審判決は正当であり、

被上告人の控訴は理由がないものとして、これを棄却すべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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