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【判例】自筆遺言証書における押印と指印 (平成元年6月23日最高裁)自筆遺言証書における押印と指印

(平成元年6月23日最高裁)

事件番号  昭和62(オ)1180

 

最高裁判所の見解

自筆証書によつて遺言をするには、遺言者が遺言の全文、日附及び

氏名を自書した上、押印することを要するが(民法九六八条一項)、

右にいう押印としては、遺言者が印章に代えて

栂指その他の指頭に墨、朱肉等をつけて押捺すること(以下「指印」という。)を

もつて足りると解すべきことは、当裁判所の判例とするところであり

(最高裁昭和六二年(オ)第一一三七号平成元年二月一六日第一小法廷判決・

民集四三巻二号四五頁)、

 

そして、指印が遺言者本人の押捺にかかるものであることは、

必ずしも遺言者本人の指印の印影(以下「指印影」という。)であることが

確認されている指印影との対照によつて立証されることを要するわけではなく、

証人の証言等によつて立証される場合のほか、

遺言書の体裁、その作成、保管の状況等諸般の事情から

推認される場合でも差し支えないと解するのが相当である。

 

しかるに、原審は、(1) 上告人ら及び被上告人らの

被相続人であるDは、新潟から所用で上京して先妻との間の

二男E方に泊まつていた折の昭和四三年三月二二日、

Eの妻Fから封筒、紙、硯及び筆を借り、

寝泊りしていたE方二階の客間において、

一人で本件遺言状を自書し、右封筒にこれを入れて封をし、

封筒の表には「遺言状」、裏には「D」と各記載した、

(2) Dは、封筒に入れた本件遺言状をEに渡し、

Eはこれを自宅応接間押入れの金庫の中に入れて保管し、

Fには遺言状を金庫に保管してある旨を伝えておいた、

(3) Dは昭和五一年三月一四日に死亡し、

続いて同年五月二八日にEが死亡したので、

Fは、Eの葬式の終わつた直後、右金庫から

本件遺言状を取り出し、自宅で封筒のまま上告人A1に渡したところ、

上告人A1は検認手続のことを知らずにその場で封を切つて内容を読み、

上告人A2もこれを読んだ、

(4) その後、上告人A1は、本件遺言状を自宅に

保管していたが、昭和五七年五月被上告人らから

遺産分割調停の申立があつたので、調停の席上本件遺言状を提出し、

昭和五八年四月検認を得た、との事実を確定しながら、

本件遺言状はDがその全文、日附及び氏名を自書して

作成した自筆遺言証書ということができるものの、

本件遺言状には末尾のD名下に墨を用いて顕出された

指印影があるのみで、印章(印顆)による印影はなく、

指印は民法九六八条一項にいう押印の要件を満たさないから、

本件遺言状による遺言は右押印を欠き無効というべきであるとして、

その無効確認を求める被上告人らの請求を棄却した

第一審判決を取り消して右請求を認容したものである。

 

したがつて、冒頭に説示したところに照らし、

原判決には法令の解釈適用を誤つた違法があるものというべきであり、

右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかといわなければならない。

 

なお、原判決は、対照しうる遺言者の指印影の保存などから

遺言書の指印影が遺言者の指印押捺にかかるものであることを

当該指印影によつて確認することができる場合には、

指印をも印に準ずるものと認めて

遺言を有効と解する余地はあるとしているものの、

これに続く説示部分も通じてみれば、結局、

指印影が遺言者の指印押捺にかかるものであることが、

保存されている遺言者の指印影との対照、

あるいはこれに準ずるような証拠から

直接立証されることを要するのに本件ではかかる

立証がないとしているものと解されるのであつて、

本件遺言状のD名下の指印影がDの指印押捺に

かかるものであるか否かについて、

本件遺言状の体裁、

その作成、保管の状況等諸般の事情から

推認されるか否か審理を尽くしたものとは認められない。

 

以上と同旨をいう論旨は理由があり、

原判決は破棄を免れない。

そして、本件指印影がDの指印押捺にかかるものであるか否かについて、

叙上の見地に基づいて更に審理を尽くさせるため、

本件を原審に差し戻すこととする。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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