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【判例】設置済みの河川管理施設の瑕疵の有無の判断基準 (平成8年7月12日最高裁)設置済みの河川管理施設の瑕疵の有無の判断基準

(平成8年7月12日最高裁)

事件番号  平成3(オ)1534

 

最高裁判所の見解

(一) いわゆる普通河川の管理についての瑕疵の有無は、

先に判示したとおり、河川管理における諸制約の下での

同種同規模の河川の管理の一般水準及び社会通念に照らして

是認し得る安全性を備えていると認められるかどうかを基準として

判断すべきであるから、原審が、

いわゆる普通河川の管理の瑕疵については直ちに

河川管理の特質や諸制約を踏まえた判断基準が

適用されるものではないとした点及び同種同規模の

水路の改修状況と比較するまでもなく吉井川の管理について

瑕疵があるとした点には、判断基準及びその適用を誤った違法がある。

 

また、原審は、昭和四四年に行われた

護岸石積工事の費用(総額四四五万円)からすると

その後の護岸石積工事の追加及びパラペットの設置が

予算上の制約から不可能なものであるとは考えられないのに

これを行わなかったことを理由に、

吉井川の管理についての瑕疵を認めるが、

同年に実際に行われた護岸石積工事の

具体的な内容、規模は不明であり、また、

原判決が行うべきであったと指摘する護岸石積工事等に

要する費用及びその水害防止についての具体的な効果も不明であって、

原判決の右説示のみによっては、

河川の管理における前記諸制約を考慮すると、

右護岸石積工事等がされなかったことをもって、

吉井川が同種同規模の河川の管理の一般水準及び

社会通念に照らして是認し得る安全性を

備えていなかったということはできない。

 

ちなみに、本件水害後吉井川全域にわたって

護岸工事及びパラペットの設置が行われ、また、

上告人ら居住地域の排水能力も格段に向上したが、

右排水能力の向上が主に舟倉ポンプ場が完成したこと

及び排水先である平作川の流下能力が本件水害後の

昭和五一年度に創設された激甚災害対策特別緊急事業制度に基づく

改修工事により向上したことに起因するものであることは、

原審説示からもうかがわれるところである。

 

なお、吉井川が本件水害当時において

下水道法二条二号の定める下水道に当たるものであったか否かは、

吉井川の管理についての瑕疵の有無に影響を及ぼさないから、

判断の必要がないというべきである。

 

(二) 被上告人横須賀市は、吉井川からのいっ水による

水害を防止するため、抜本的な対策としては、

吉井川流域に雨水排除を目的の一つとする

公共下水道を整備することとし、

既に昭和四三年ころには吉井川流域の上告人ら

居住地域を含む久里浜地区一帯における

ポンプ場建設の必要性を認識し、公共下水道整備を市の中心部から

順次隣接地域に拡大して、同四八年三月三一日には

上告人ら居住地域を対象地域として含み、

時間雨量六〇ミリメートルを基準とする下水道整備計画につき、

建設大臣の認可を受け、右計画に基づき、

吉井川の排水能力を高めるために舟倉ポンプ場の設置を計画し、

本件水害前の同年一二月から右ポンプ場の設置のための

用地買収等を行ってきたものであり、また、

右抜本的な対策とは別の当面の対策としては、

水門の整備改良工事、清掃工事及びしゅんせつ工事などを

行ってきたものである。

 

そして、吉井川は、こう配がほとんどなく、

平作川との合流点においては満潮の影響を受け、

その流下能力は排水先である平作川の流下能力の影響を受けるなど、

雨水排除のための自然的条件には恵まれない河川であるところ、

その流域においては同四〇年代から進んだ

急激な宅地開発に伴い山林、農地が減少し、

土地の保水機能が減退して、

いっ水による水害発生の可能性が増大したというのであるから、

河川の管理における諸制約を考慮すると、

同被上告人が吉井川について通常予測し得る

水害を防止するに足りる安全性を速やかに

確保することは困難であったといえること、

本件水害以前に吉井川からのいっ水を原因として

生じていた水害による被害は、流域の住民の生命に危険を及ぼしたり、

家屋流失等の大規模な財産的損害を発生させたりするほどのものではなく、

我が国における当時の同種同規模の河川において

しばしば発生していたものと同程度のものと認められること、

流域の宅地化によりかんがい用水路から

市街地の排水路に変容した吉井川のような普通河川については、

本件水害当時の我が国においては、改修計画の策定も、

築堤や河道拡張などの本格的な改修工事の実施も

されていないのが通常であること、同被上告人が

吉井川流域の水害防止対策として公共下水道整備を

計画したこと並びに市の中心部及び追浜地区の下水道整備が

優先された点を含めて同被上告人による下水道整備計画の

策定時期、内容及びその実施状況には

不合理な点がないと認められることなどの事情を考慮すると、

原審の適法に確定した事実関係の下においては、

吉井川は、本件水害当時において、

河川の管理における諸制約の下での同種同規模の河川の管理の

一般水準及び社会通念に照らして是認し得る

安全性を備えていなかったものとはいえないから、

その管理について瑕疵があったということはできないというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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