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【判例】課税処分の取消訴訟における実体上の審判の対象 (平成4年2月18日最高裁)課税処分の取消訴訟における実体上の審判の対象

(平成4年2月18日最高裁)

事件番号  平成2(行ツ)155

 

最高裁判所の見解

所得税法によれば、居住者に対して課される

所得税の額(以下「算出所得税額」という。)は、

一暦年間におけるすべての所得の金額を総合して

課税総所得金額等を計算した上、これに所定の税率等を適用して

算出するものとされ(第二編第一章ないし第三章)、

同法一二〇条一項の規定により確定申告をする居住者は、

総所得金額若しくは退職所得金額又は純損失の金額の計算の基礎となった

各種所得につき同項五号の

「源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額」

(以下「源泉徴収税額」という。)がある場合には、

これを算出所得税額から控除して納付すべき所得税の額を計算し、

その結果納付すべき税額があるときは、

これを国に納付しなければならないものとされ(同号、一二八条)、また、

右の計算上控除しきれなかった金額があるときは、

その金額に相当する所得税の還付を受けることが

できるものとされている(一二〇条一項六号、一三八条)。

 

右の一二〇条一項五号にいう「源泉徴収をされた又は

されるべき所得税の額」とは、

所得税法の源泉徴収の規定(第四編)に基づき

正当に徴収をされた又はされるべき所得税の額を意味するものであり、

給与その他の所得についてその支払者がした

所得税の源泉徴収に誤りがある場合に、その受給者が、

右確定申告の手続において、支払者が誤って徴収した金額を

算出所得税額から控除し又は右誤徴収額の全部若しくは

一部の還付を受けることはできないものと解するのが相当である。

 

けだし、所得税法上、源泉徴収による

所得税(以下「源泉所得税」という。)について

徴収・納付の義務を負う者は源泉徴収の対象となるべき

所得の支払者とされ、原判示のとおり、その納税義務は、

当該所得の受給者に係る申告所得税の納税義務とは

別個のものとして成立、確定し、これと並存するものであり、そして、

源泉所得税の徴収・納付に不足がある場合には、不足分について、

税務署長は源泉徴収義務者たる支払者から徴収し(二二一条)、

支払者は源泉納税義務者たる受給者に対して

求償すべきものとされており(二二二条)、また、

源泉所得税の徴収・納付に誤りがある場合には、

支払者は国に対し当該誤納金の還付を請求することができ

(国税通則法五六条)、他方、受給者は、

何ら特別の手続を経ることを要せず

直ちに支払者に対し、本来の債務の一部不履行を理由として、

誤って徴収された金額の支払を直接に請求することができるのである

(最高裁昭和四三年(オ)第二五八号同四五年一二月二四日第一小法廷判決・

民集二四巻一三号二二四三頁参照)。

 

このように、源泉所得税と申告所得税との各租税債務の間には

同一性がなく、源泉所得税の納税に関しては、

国と法律関係を有するのは支払者のみで、

受給者との間には直接の法律関係を

生じないものとされていることからすれば、

前記源泉徴収税額の控除の規定は、

申告により納付すべき税額の計算に当たり、

算出所得税額から右源泉徴収の規定に基づき徴収すべきものと

されている所得税の額を控除することとし、

これにより源泉徴収制度との調整を図る

趣旨のものと解されるのであり、

右税額の計算に当たり、源泉所得税の徴収・納付における

過不足の清算を行うことは、所得税法の予定するところではない。

 

のみならず、給与等の支払を受けるに当たり誤って

源泉徴収をされた(給与等を不当に一部天引控除された)受給者は、

その不足分を即時かつ直接に支払者に請求して

追加支払を受ければ足りるのであるから、

右のように解しても、その者の権利救済上支障は

生じないものといわなければならない。

 

右と同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、

原判決に所論の違法はない。

 

右違法があることを前提とする所論違憲の主張は、

その前提を欠く。論旨は、採用することができない。

 

同第二の一について

課税処分の取消訴訟における実体上の審判の対象は、

当該課税処分によって確定された税額の適否であり、

課税処分における税務署長の所得の源泉の認定等に誤りがあっても、

これにより確定された税額が総額において租税法規によって

客観的に定まっている税額を上回らなければ、

当該課税処分は適法というべきである。

 

原審の適法に確定した事実関係の下において、

上告人らの本件各収入が給与所得でなく、

一時所得又は退職所得であるとしても、

本件各更正処分等に係る納付すべき税額は、

右の場合の正当な納付すべき税額を下回るとした原審の判断は、

正当として是認することができる。

 

そうすると、いずれにしても

本件各更正処分等は違法とはいえないのであって、

本件各収入が給与所得であるかどうかについて判断するまでもなく、

上告人らの本件各請求は理由がない。

 

原判決に所論の違法はなく、

論旨は採用することができない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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