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【判例】退職金支払、民訴198条2項に基づく損害賠償申立 (平成元年9月7日最高裁)退職金支払、民訴198条2項に基づく損害賠償申立

(平成元年9月7日最高裁)

事件番号  昭和60(オ)728

 

最高裁判所の見解

 

上告人と被上告人との間の労働契約においては、

被上告人は上告人に対しその退職日とされる

昭和五五年六月三〇日に退職金を支払うとの約定がされ、

一方、被上告人の就業規則には、退職金は

「支給時の退職金協定による。」と定められているところ、

右上告人の退職日の時点では、上告人の属する外銀労と

被上告人との間で締結された本件退職金協定はすでに失効しており、

これに代わる退職金協定は締結されていないので、

上告人の退職金額の決定についてよるべき退職金協定は

存在しないこととなる。

 

しかしながら、右労働契約上は、退職時に

退職金の額が確定することが予定されているものというべきであり、

右就業規則の規定も、被上告人が従業員に対し

退職金の支払義務を負うことを前提として、

もっぱらその額の算定を退職金協定に基づいて行おうとする

趣旨のものであると解されるから、

外銀労との間で新たな退職金協定が締結されていないからといって、

上告人について退職時にその退職金額が確定せず、

したがって具体的な退職金請求権も発生しないと解するのは相当でなく、

労働契約、就業規則等の合理的な解釈により退職時において

その額が確定されるべきものといわなければならない。

 

ところで、被上告人は、昭和五〇年一〇月九日付で、

労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)八九条一項に基づき、

従業員組合との間で昭和五〇年六月二六日締結した

前記退職金協定に係る協定書の写しを添付した

就業規則変更届を所轄労働基準監督署長に届け出ており、

したがって、右退職金協定に定められた退職金の支給基準は、

就業規則に取り入れられて就業規則の一部となったものというべきである。

 

そして、就業規則は、労働条件を統一的・画一的に定めるものとして、

本来有効期間の定めのないものであり、

労働協約が失効して空白となる労働契約の内容を補充する機能も

有すべきものであることを考慮すれば、

就業規則に取り入れられこれと一体となっている

右退職金協定の支給基準は、右退職金協定が

有効期間の満了により失効しても、当然には効力を失わず、

退職金額の決定についてよるべき

退職金協定のない労働者については、

右の支給基準により退職金額が決定されるべきものと

解するのが相当である。

 

そうすると、従業員組合との間の右退職金協定は

昭和五三年一二月三一日に失効したが、

それに伴い就業規則が変更された事実は認められないから、

上告人については、右就業規則所定の退職金の

支給基準(本件退職金協定に定められた退職金の支給基準と同一である。)の

適用があるというべきである。

 

被上告人は、原審において、労働組合法一七条により、

昭和五九年七月二五日従業員組合との間で

締結された昭和五五年度退職金協定が外銀労の組合員たる

上告人にも遡及的に拡張適用されるべきであると主張しているが、

既に発生した具体的権利としての退職金請求権を

事後に締結された労働協約の遡及適用により処分、

変更することは許されないというべきであるから、

右拡張適用の有無について判断するまでもなく、

右主張は理由がないといわなければならない。

 

なお、被上告人は、従業員組合との間で締結した

前記昭和五五年度及び同五六年度の各退職金協定に基づき

就業規則の変更を行い、昭和五九年八月二一日

各協定書の写しを添付した各就業規則変更届を

所轄労働基準監督署長に届け出ているが、

右就業規則の変更についても、

同様の理由により遡及効を認めることはできない。

 

四 そうすると、原審が、上告人について、

昭和五〇年一〇月九日付で届け出られた

前記就業規則所定の退職金の支給基準を適用せず、

従業員組合との間で締結された昭和五五年度退職金協定が

遡及的に拡張適用されるとし、同退職金協定に基づき

退職金額を確定すべきものとしたのは、

労働契約及び就業規則の解釈、適用を

誤った違法があるものといわなければならず、

右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、

この点をいう論旨は理由があり、

原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。

 

そして、原審の確定した事実関係のもとにおいては、

上告人の本件退職金請求はすべて理由があるから、

これを認容した第一審判決は結論において正当であり、

右判決に対する被上告人の控訴は理由がないので棄却すべきである。

 

なお、原審における被上告人の

民訴法一九八条二項に基づく申立ては、

本案判決の変更されないことを解除条件とするものというべきであるから、

右控訴を棄却する以上判断を必要としないものである

(最高裁昭和五一年(オ)第一九号、

第二〇号同年一一月二五日第一小法廷判決・

民集三〇巻一〇号九九九頁参照)。

 

附帯上告代理人岡本秀夫の上告理由について

被上告人が上告人に提示したと主張する金額は、

上告人に支払われるべき前記退職金額に満たないから、

被上告人が右主張金額の提供をしたとしても

債務の本旨に従った弁済の提供ということはできず、

上告人に受領遅滞の責任があるとする被上告人の主張は理由がない。

 

この点に関する原審の判断は、結論において正当であり、

原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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