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【判例】遺族補償給付等不支給処分取消 (平成9年4月25日最高裁)遺族補償給付等不支給処分取消

(平成9年4月25日最高裁)

事件番号  平成6(行ツ)200

 

最高裁判所の見解

前記事実関係によれば、Dは、

非外傷性の脳血管疾患を発症しているのであるから、

その発症の基礎となり得る素因又は疾患を有していたことは否定し難いが、

その程度や進行状況を明らかにする客観的資料がないだけでなく、

同人は、死亡当時三九歳と比較的若年であり、

死亡前約三年間は医療機関で受診した形跡はなく、

周囲の者からは健康状態に

格別異常はないとみられていたというのであるから、

同人の家族歴を考慮しても、右基礎疾患等が確たる

発症因子がなくてもその自然の経過により血管が破綻する

寸前にまで進行していたとみることは困難である。

 

そして、Dが脳血管疾患の症状を示す二日前に遭遇した本件事故は、

金車及びこれと一体をなすフック等がつり荷である

電柱と共に地上約三メートルの高さから同人の近くに落下し、

その結果、同人が軽度とはいえ顔面を負傷したというものであり、

右の事故態様に照らし、相当に強い恐怖、

驚がくをもたらす突発的で異常な事態というべきであって、

これによる精神的負荷及び本件事故後に生じた頭痛や食欲不振といった

身体的不調は、同人の基礎疾患等をその自然の経過を超えて

急激に悪化させる要因となり得るものというべきである。

 

しかも、Dは、本件事故後も、右のような

精神的、肉体的ストレスを受けながら、厳冬期に、

地上約一〇メートルの電柱上での電気供給工事等の

相当の緊張と体力を要する作業に従事していたというのである。

 

以上によれば、Dの死亡原因となった非外傷性の脳血管疾患は、

他に確たる発症因子のあったことがうかがわれない以上、

同人の有していた基礎疾患等が業務上遭遇した

本件事故及びその後の業務の遂行によって

その自然の経過を超えて急激に悪化したことによって

発症したものとみるのが相当であり、

その間に相当因果関係の存在を肯定することができる。

 

Dの死亡は、労働者災害補償保険法にいう

業務上の死亡に当たるというべきである。

 

四 以上によれば、Dの死亡は

業務上の死亡に当たらないとした原審の判断には

法令の解釈適用を誤った違法があり、

右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、

この点をいう論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

 

そして、前記説示によれば、

上告人の請求を認容した第一審判決は正当として

是認すべきものであるから、被上告人の控訴を棄却すべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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