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【民法】民訴法231条において準用する同法220条4号ロ(平成25年4月19日最高裁)民訴法231条において準用する同法220条4号ロ

(平成25年4月19日最高裁)

事件番号  平成25(行フ)2

 

この裁判は、

全国消費実態調査の調査票情報を記録した準文書が

民訴法231条において準用する同法220条4号ロ所定の

「その提出により…公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」

に当たるとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

(1)ア 平成19年法律第53号による改正後の統計法は,基本理念として,

公的統計の作成に用いられた個人又は法人

その他の団体に関する秘密は保護されなければならないと定め(3条4項),

統計調査によって集められた情報のうち文書,

図画又は電磁的記録によって記録されているものである

調査票情報の取扱いに関する業務に従事する者等に対し,

調査票情報等を適正に管理するために必要な措置を

講ずる義務(39条,42条)及び守秘義務等(41条,43条)を課し,

守秘義務等に違反した者に対する刑事罰を定めており(57条),

また,調査票情報の目的外利用を原則として禁止し(40条),

例外として二次利用が認められる場合を法定している(32条から36条まで)。

 

このように,統計法は,公的統計が国民にとって

合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報であること(1条)に鑑み,

正確な統計を得るために被調査者から真実に合致した正確な内容の報告を

得る必要があることから,被調査者の統計制度に係る

情報保護に対する信頼を確保することを目的として,

様々な角度から調査票情報の保護を図っている。

 

イ 全国消費実態調査は,平成19年法律第53号による

改正前の統計法における指定統計調査として指定されており,

平成11年の全国消費実態調査によって集められた調査票情報は,

上記改正後の統計法における基幹統計調査に係る調査票情報とみなされる

(平成19年法律第53号附則9条)。

 

基幹統計は,国勢統計及び国民経済計算のほか,

全国的な政策を企画立案し又はこれを実施する上において

特に重要な統計として総務大臣が指定するものであり(統計法2条4項),

公的統計の中核をなすものとして

特に重要性が高い統計として位置付けられており,

その基礎となる報告の内容の真実性及び正確性が

担保されることが特に強く求められるものということができる。

 

このような観点から,基幹統計の作成を目的とする基幹統計調査について,

統計法は,所轄行政庁に個人又は法人

その他の団体に対する報告の徴収に加えて

立入検査等の調査の権限を付与し(13条1項,2項,15条1項),

その報告や調査の拒否等につき

罰金刑の制裁を科す(61条1号,2号)などの定めを

置いているが,全国消費実態調査のように個人及び

その家族の消費生活や経済状態等の詳細について

報告を求める基幹統計調査については,事柄の性質上,

上記の立入検査等や罰金刑の制裁によって

その報告の内容を裏付ける客観的な資料を強制的に徴収することは

現実には極めて困難であるといわざるを得ないから,

その報告の内容の真実性及び正確性を担保するためには,

被調査者の任意の協力による真実に合致した

正確な報告が行われることが極めて重要であり,

調査票情報の十全な保護を図ることによって

被調査者の当該統計制度に係る情報保護に対する

信頼を確保することが強く要請されるものというべきである。

 

(2) 全国消費実態調査に係る

調査票情報である本件準文書に記録された情報は,

個人の特定に係る事項が一定の範囲で除外されているとはいえ,

前記1(5)及び(6)のとおり,被調査者の家族構成や居住状況等に加え,

月ごとの収入や日々の支出と物の購入等の家計の状況,

年間収入,貯蓄現在高と借入金残高及びそれらの

内訳等の資産の状況など,個人及び

その家族の消費生活や経済状態等の委細にわたる極めて

詳細かつ具体的な情報であって,金額等の数値も

一部が分類されて2か月分の加重平均となるほかは

細目にわたり報告の内容のまま記録されており,

被調査者としては通常他人に知られたくないと考えることが

想定される類型の情報であるといえる。

 

このような全国消費実態調査に係る情報の性質や内容等に鑑みれば,

仮にこれらの情報の記録された本件準文書が訴訟において提出されると,

当該訴訟の審理等を通じてその内容を知り得た者は

上記(1)アのような守秘義務等を負わず利用の制限等の規制も受けない以上,

例えば被調査者との関係等を通じてこれらの情報の一部を

知る者などの第三者において被調査者を特定して

これらの情報全体の委細を知るに至る可能性が

あることを否定することはできず,

このような事態への危惧から,現に前記1(7)の世論調査の結果から

もうかがわれるように,被調査者が調査に協力して

真実に合致した正確な報告に応ずることに強い不安,

懸念を抱くことは否定し難く,こうした危惧や不安,懸念が

不相当なものであるとはいい難い。

 

(3) 基幹統計調査としての全国消費実態調査における

被調査者の当該統計制度に係る情報保護に対する信頼の確保に係る

上記(1)の要請に加え,全国消費実態調査に係る

調査票情報である本件準文書に記録された情報の性質や内容等に係る上記

(2)の事情も併せ考慮すれば,仮に本件準文書が本案訴訟において

提出されると,上記(1)及び前記1(5)ウのように

調査票情報に含まれる個人の情報が保護されることを前提として

任意に調査に協力した被調査者の信頼を著しく損ない,ひいては,

被調査者の任意の協力を通じて

統計の真実性及び正確性を担保することが著しく

困難となることは避け難いものというべきであって,

これにより,基幹統計調査としての全国消費実態調査に係る

統計業務の遂行に著しい支障をもたらす

具体的なおそれがあるものといわなければならない。

 

以上によれば,本件準文書は,民訴法231条において

準用する同法220条4号ロ所定の

「その提出により…公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」

に当たるものというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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