地方自治法242条2項

(平成14年10月3日最高裁)

事件番号  平成9(行ツ)62

 

最高裁判所の見解

(1) 本件規定は,監査請求の対象事項のうち財務会計上の行為については,

当該行為があった日又は終わった日から1年を経過したときは

監査請求をすることができないものと規定しているが,

上記の対象事項のうち法242条1項にいう怠る事実については,

このような期間制限は規定されておらず,

怠る事実が存在する限りはこれを制限しないこととするものと解される。

 

もっとも,特定の財務会計上の行為が財務会計法規に違反して

違法であるか又はこれが違法であって無効であるからこそ発生する

実体法上の請求権の行使を怠る事実を対象として監査請求がされた場合には,

これについて上記の期間制限が及ばないとすれば,

本件規定の趣旨を没却することとなる。

 

したがって,このような場合には,当該行為のあった日又は

終わった日を基準として本件規定を適用すべきものである(前掲第二小法廷判決参照)。

 

しかし,怠る事実については監査請求期間の制限がないのが

原則であることにかんがみれば,

監査委員が怠る事実の監査をするに当たり,

当該行為が財務会計法規に違反して違法であるか否かの

判断をしなければならない関係にない場合には,

当該怠る事実を対象としてされた監査請求に

上記の期間制限が及ばないものとすべきであり,

そのように解しても,本件規定の趣旨を没却することにはならない

(最高裁平成10年(行ヒ)第51号同14年7月2日

第三小法廷判決・裁判所時報1318号1頁〔編注:民集56巻6号1049頁〕参照)。

 

(2) 記録によれば,本件監査請求は,

県建築部及び総務部の幹部が,

被上告会社9社の要請を受け,本件工事に関し,

単価の水増し等の操作により設計変更予算案を違法に作成し,

県議会に対してその事実を隠ぺいしたため,

増額変更予算の執行議案が原案どおり可決承認され,

29億円余を不当に追加する本件変更契約が締結されたとして,

財務会計職員その他の職員等による本件変更契約の締結その他

これにかかわる行為等を対象としているが,そのほか,

被上告会社9社が,県に対し,本件工事に関し不当に水増し請求をするなどし,

県に本来支払う義務のない工事代金29億円余を余分に支払わせたとし,

県は,被上告会社9社に対しこの不法行為により受けた損害である

上記金員相当額を賠償させるべきであるのに,

当該請求権の行使を怠っているという事実を対象に含んでいることが明らかである。

 

本件監査請求中上記怠る事実について監査を遂げるためには,

監査委員は,被上告会社9社について上記行為が認められ,

それが不法行為法上違法の評価を受けるものであるかどうか,

これにより県に損害が発生したといえるかどうかなどを確定しさえすれば足りる。

 

本件監査請求には,財務会計職員その他の職員が被上告会社9社の要請を受けて

本件変更契約の締結その他これにかかわる行為を行ったなどとする部分が含まれているが,

このことによって上述したことは左右されない。

 

県の被上告会社9社に対する損害賠償請求権は,

本件変更契約が違法,無効であるからこそ発生するものではない。

 

したがって,上記監査請求について本件規定の適用がないものと認めても,

本件規定の趣旨が没却されるものではなく,

監査請求期間の制限が及ばないものと解するのが相当である。

 

そうすると,本件監査請求中,本件工事に関し,

前記不法行為により,県に本来支払う義務のない

工事代金を余分に支払わせた被上告会社9社に対する

損害賠償請求権の行使を怠る事実を対象とする部分は,

監査請求期間を徒過した不適法なものということはできない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


スポンサードリンク