地方自治法232条の2,地方自治法244条1項

(平成17年10月28日最高裁)

事件番号  平成14(行ヒ)144

 

最高裁判所の見解

(1) 前記事実関係等によれば,陣屋の村は,

町の豊かな自然を生かし,住民に自然に親しむ機会を与えるとともに,

都市との交流を促進するという目的で設置された

農林漁業体験実習施設,食堂,宿泊施設等から成る公の施設であり,

振興協会は,陣屋の村の管理及び運営の事業を行うことを目的として

町により設立されたものであって,町から委託を受けて

専ら陣屋の村の管理及び運営に当たっているというのであるから,

その運営によって生じた赤字を

補てんするために補助金を交付することには

公益上の必要があるとした町の判断は,

一般的には不合理なものではないということができる。

 

そして,本件条例が陣屋の村を設置することとした目的等に照らせば,

仮に振興協会による事務処理に問題があり,

そのために陣屋の村の運営収支が赤字になったとしても,

直ちに,上記目的や陣屋の村の存在意義が失われ,

町がその存続を前提とした施策を執ることが

許されなくなるものではないというべきである。

 

そうすると,本件雇用によって赤字が

増加したという事情があったからといって,

それだけで,陣屋の村を存続させるために

その赤字を補てんするのに必要な補助金を振興協会に

交付することを特に不合理な措置ということはできない。

 

加えて,前記事実関係等によれば,Eは,

振興協会の理事長として,食堂営業の収入を

増加させるため和食調理の腕の立つ

調理員を採用すべきであると判断して

本件雇用を決定したものであり,

人件費の増加による赤字の発生の防止についても

一応の見通しを持っていたものというべきであって,

同人が本件雇用をしたことや,本件雇用をした

平成8年9月から平成8年度の末日である

平成9年3月末日までの間に他の調理員を

解雇する措置に踏み切らなかったことが,

経営上の裁量を逸脱した放漫な行為であったとはいえない。

 

(2) 以上によれば,振興協会がした本件雇用に関して

原審が説示する上記3の(2)のような理由で

本件補助金の交付が公益上の必要を欠くということはできない。

 

5 そうすると,上記と異なる判断に立って本件補助金に係る

支出を違法とした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが

明らかな法令の違反がある。

 

論旨は理由があり,原判決のうち上告人らの敗訴部分は,

その余の論旨について判断するまでもなく,破棄を免れない。

 

そして,以上説示したところによれば,

同部分に関する被上告人の請求は理由がないから,

第1審判決のうち上告人らの敗訴部分を取り消し,

同部分に関する請求を棄却すべきである。

 

なお,被上告人は,請求を放棄する旨の書面を当裁判所に提出し,

同書面は,本件口頭弁論期日において陳述したものとみなされた。

 

しかしながら,地方自治法242条の2第1項4号に基づく

住民訴訟において,これを提起した住民は,その請求を

放棄することができないものと解するのが相当である。

したがって,被上告人のした請求の放棄は,

その効力を生じないものというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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