親子関係不存在確認
(平成9年3月11日最高裁)
事件番号 平成3(オ)399
最高裁判所の見解
本件訴訟は、昭和六三年八月二二日Dが死亡した後、
上告人らと被上告人との間で、家業の製靴業の
経営権をめぐる争いが生じ、遺産分割協議も進展せず、
右分割協議の前提として上告人A2の身分関係を
明確にする必要があることから、被上告人が上告人らを相手に、
Dと上告人A2との間に父子関係が、
上告人A1と上告人A2との間に母子関係が存在しないことの
確認を求めて提起したものである。
2 身分関係存否確認訴訟は、身分法秩序の根幹を成す
基本的親族関係の存否につき関係者間に紛争がある場合に
対世的効力を有する判決をもって画一的確定を図り、
ひいてはこれにより身分関係を公証する戸籍の記載の正確性を
確保する機能をも有するものであるところ、
虚偽の嫡出子出生届出により戸籍上存在する
表見的親子関係の不存在確認を求める
本件訴訟の有する右のような性質等に加えて、
本件訴訟でD夫婦と上告人A2との間に親子関係が
存在しないことを確認する旨の判決が確定した後、
あらためて上告人らの間で養子縁組の届出をすることにより
嫡出母子関係を創設するなどの方策を講ずることも可能であることにも
鑑みれば、前記のような本件事実関係の下においては、
論旨が主張するように、D夫婦と上告人A2との間に
長年にわたり実親子と同様の生活の実体があり、
当事者がその共同生活の解消を望んでいなかったことや、
被上告人が、D夫婦と上告人A2との間の
親子関係の不存在を熟知しておりながら、
Dの死亡前にはその確認を求める訴訟を
提起しなかったことなどを考慮しても、
被上告人の本訴請求が権利の濫用に当たり
許されないものということはできないというべきであり、
これと同旨の原審の判断は正当として是認することができる。
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