「すべての偶然な事故」を保険事故とするテナント総合保険普通保険約款

(平成18年9月14日最高裁)

事件番号  平成17(受)2205

 

この裁判では、

「すべての偶然な事故」を保険事故とする

テナント総合保険普通保険約款に基づき

火災による什器備品等の焼失及び休業が保険事故に該当するとして

保険金の支払を請求する場合における事故の

偶発性についての主張立証責任について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

商法629条が損害保険契約の保険事故として規定する

「偶然ナル一定ノ事故」とは,保険契約成立時において

発生するかどうかが不確定な事故をいうものと解される。

 

また,同法641条が,保険契約者又は被保険者の悪意又は

重過失によって生じた損害について保険者は

てん補責任を負わない旨規定しているのは,

保険契約者又は被保険者が故意又は重過失によって

保険事故を発生させたことを保険金請求権の発生を

妨げる免責事由として規定したものと解される。

 

本件約款は,保険事故として「すべての偶然な事故」と定める一方,

保険契約者等の故意又は重大な過失によって生じた損害に対しては

保険金を支払わないこととしているが,

これらの定めを商法の上記各条文に照らしてみれば,

本件約款は,保険契約成立時に発生するかどうかが

不確定な事故をすべて保険事故とすることを

明らかにしたものと解するのが相当であり,

本件約款にいう「偶然な事故」を,

商法629条にいう「偶然ナル」事故とは異なり,

保険事故の発生時において保険契約者等の

意思に基づかない事故であること(保険事故の偶発性)を

いうものと解することはできない

(最高裁平成17年(受)第1206号同18年6月1日

第一小法廷判決・裁判所時報1413号4頁参照)。

 

したがって,本件約款を契約内容とする本件保険契約に基づき

火災による什器備品等の焼失及び休業が保険事故に該当するとして

保険金を請求する者は,事故の発生が保険契約者等の意思に

基づかないものであることについて主張,立証すべき責任を負わず,

保険契約者等の故意又は重過失によって保険事故が発生したことは,

保険者において,免責事由として

主張,立証する責任を負うと解すべきである。

 

原審は,以上と異なり,本件保険契約に基づき

保険金の支払を請求する者は本件火災が偶発的なものであることにつき

主張,立証責任を負うと解した上,その立証がないとして

上告人の被上告人に対する請求を棄却したものである。

 

しかし,原審が確定したところによれば,

本件火災は漏電等による偶発的なものか

Aによる放火のいずれかであるが,

そのいずれであるとも認定できないというのである。

 

そして,記録に徴すれば,被上告人は,

Aによる放火であると主張する以外には免責事由を

主張していないことが明らかであるから,

Aによる放火の事実が認められない以上,

被上告人は,本件保険契約に基づき,

本件火災により生じた損害につき保険金の

支払義務を免れないというべきである。

 

原審の前記判断には,判決に影響を及ぼすことが

明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,

原判決中被上告人に関する部分は破棄を免れない。

 

そして,損害の額につき更に審理を尽くさせるため,

同部分を原審に差し戻すこととする。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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