「国税に関する法律に基づく処分」
( 平成5年10月8日最高裁)
事件番号 平成4(行ツ)183
最高裁判所の見解
一 国税通則法五七条による充当は、
行政庁である税務署長等が所定の場合に
一方的に行うべきものとされ(同条一項)、
その結果、充当された還付金等に相当する額の国税の納付が
あったものとみなされることになるものであり(同条二項)、
また、税務署長等は、右充当をしたときは、
その旨を相手方に通知するものとされている(同条三項)。
このような実定法規の定めからすると、右充当は、
公権力行使の主体である税務署長等が一方的に行う行為であって、
それによって国民の法律上の地位に直接影響を及ぼすものというべきであり、
同法七五条一項にいう「国税に関する法律に基づく処分」
に当たると解するのが相当である
(なお、地方税法一九条九号、同法施行規則一条の七第四号参照)。
また、国税通則法三七条による督促は、
滞納処分の前提となるものであり、督促を受けたときは、
納税者は、一定の日までに督促に係る国税を
完納しなければ滞納処分を受ける地位に
立たされることになるから(同法四〇条、国税徴収法四七条)、
右督促も、国税通則法七五条一項にいう
「国税に関する法律に基づく処分」に当たると
解するのが相当である(なお、地方税法一九条二号参照)。
二 原判決は、右と異なり、右充当及び督促がいずれも
「国税に関する法律に基づく処分」に当たらないとした上、
本件各充当及び本件督促についての審査請求を
棄却した各裁決の取消しを求める本件各訴えを
訴えの利益を欠くから不適法であるとして却下した
第一審判決を支持しており、
この点で法令の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ない。
しかしながら、本件記録によれば、
上告人が右各裁決の取消事由として主張するところは、
結局、その各原処分である本件各充当及び
本件督促の違法をいうにすぎないものであって、
上告人の本件各請求は、主張自体理由がないことが明らかである
(行政事件訴訟法一〇条二項)。
そうすると、本件各請求は棄却を免れないところであるが、
不利益変更禁止の原則により、上告を棄却するにとどめるほかなく、
結局、原判決の前示の違法は、結論に影響を及ぼさないことになる。
また、原判決に所論のその余の違法はなく、
論旨はいずれも採用することができない。
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