ゴルフ場建設工事中に締結されたゴルフクラブ入会契約

(平成9年10月14日最高裁)

事件番号  平成7(オ)48

 

最高裁判所の見解

本件入会契約においては、いかなる時期に

本件ゴルフ場の完成が約されていたかを考えると、

一般に、本件のようにゴルフ場の建設工事中の時点において、

将来における完成、開場を見込んで

この種の契約が締結された場合において、

履行期を記載した契約証書も作成されておらず、

募集パンフレットに「完成昭和六三年秋予定」

等という記載があったにすぎず、

入会契約当時においては平成元年に開場することが

予定されていたと認められるというような事情のあるときは、

その履行期は早くとも、平成元年以後であって、

その後のゴルフ場建設工事の進ちょく状況並びに

当時の社会経済状況に照らして、右工事の遅延に関して予想される

合理的な遅延期間が経過した時という、

かなり幅のある弾力的なものであったとみるのが相当である。

 

その意味では、右の履行期はいわば不確定期限というべきものであるが、

全く未確定のものではなく、当初予定されていた時期より合理的な

期間の遅延は許される限度のものであったということができる。

 

(三) けだし、一般にゴルフ場建設工事は、

用地買収等に思わぬ長期間を要したり、

予期し得ない自然的要因や技術的要因などによって建設工事に

予定以上の期間を要することは珍しくなく、

当初予定の期間内に建設工事が完成しないこともあり得ることが

十分に予想されるところ、実際にも、

本件契約が締結された昭和六二年当時の我が国においては、

建設工事中に将来の完成を見込んで会員募集が行われた

ゴルフ場についてその開場が当初の予定よりも

数年程度遅れることが常態化していたのに対し、

この種の募集に応募して入会契約を締結する側においても、

将来の会員権の値上がりを期待して、

ゴルフ場の開場が確かであれば、

その時期の遅れはあまり厳格に考えないのが

一般であったことは公知の事実であって、

上告人が特にその例外であったとの事情は認められない。

 

(四) ところで、前記認定の事実によれば、

本件ゴルフ場の建設工事は、現実に、

調整池予定地の買収ができなくなり別の場所に

調整池を設置せざるを得なかったこと及びゴルフ場につながる

道路の拡幅工事についての用地買収が遅れたことなどが

原因で遅延したのであるが、その後の努力により工事が進ちょくし、

上告人が解除の意思表示をした平成四年二月一日には

既に視察プレーの名目の下における営業が開始され、

近々債務の本旨に従った履行がされることが

ほぼ確実に見込まれるまでになっていたというのであって、

これらの事実に照らすと、右の解除の意思表示の時点においては、

右債務の履行期が既に到来していたものと断ずることはできない。

 

ゴルフ場経営会社にゴルフ場の高低差等のコースレイアウトに関する債務の不完全履行があるか

本件ゴルフ場の募集パンフレットに高低差一〇メートル以内の

フラットなコースとする旨の記載があったことからすると、

各ホールの高低差等のコースレイアウトの内容が

およそ本件入会契約の内容とならないということはできない。

 

しかしながら、本件入会契約においては、

高低差等のコースレイアウトについて契約証書において

図面等に基づき詳細な合意がされたものではなく、

募集パンフレットには、高低差一〇メートル以内の

フラットなコースとする旨の記載がある一方で、

コース断面図には一五メートルの高低差のあるホールも

記載されていたことなどからすると、その契約内容は、

全ホールについて高低差一〇メートル以内とするものではなく、

できるだけ高低差が少なく全体として

フラットといい得るコースを作るというにとどまるものというべきである。

 

そして、本件ゴルフ場完成当時において、

全一八ホール中過半数のホールが高低差二〇メートル未満で

あったことなどからすると、

前記事実関係によっても、被上告人に

本件ゴルフ場の高低差等のコースレイアウトの点に関する

債務不履行があるとまではいえないというべきである。

 

(二) また、プレー的魅力があり

戦略性に富む名門コースとするというだけでは、

法律上の債務というには具体性がなく、

この点についての債務不履行を認める余地はないというべきであるし、

募集要綱に一〇〇パーセント社有地という記載があっただけでは、

敷地の一部に借地があることのみをもって

解除原因となるものでもないというべきである。

 

3 以上によれば、上告人の不完全履行による

解除の主張は理由がないものというべきであり、また、

この点についての錯誤無効の主張も理由がないことが明らかである。

 

四 そうすると、上告人の本件請求を棄却すべきものとした原審の判断は、

その結論において正当であり、論旨は、

すべて採用することができない

 

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