タックス・ヘイブン対策税制

(平成21年10月29日最高裁)

事件番号  平成20(行ヒ)91

 

この裁判では、

租税特別措置法(平成12年法律第97号による改正前のもの)

66条の6第1項は,

「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び

脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の協定」

7条1項に違反するかについて

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

措置法66条の6第1項の規定は,

内国法人が,法人の所得等に対する

租税の負担がないか又は極端に低い国若しくは地域(タックス・ヘイブン)に

子会社を設立して経済活動を行い,

当該子会社に所得を留保することによって,

我が国における租税の負担を回避しようとする事例が

生ずるようになったことから,

このような事例に対処して税負担の実質的な公平を図ることを目的として,

一定の要件を満たす外国会社を特定外国子会社等と規定し,

その課税対象留保金額を内国法人の所得の計算上益金の額に

算入することとしたものである

(最高裁平成17年(行ヒ)第89号同19年9月28日

第二小法廷判決・民集61巻6号2486頁参照)。

 

しかし,特定外国子会社等であっても,

独立企業としての実体を備え,その所在する国又は地域において

事業活動を行うことにつき十分な経済合理性がある場合にまで

上記の取扱いを及ぼすとすれば,当該内国法人の

海外進出を不当に阻害するおそれがあることから,

措置法66条の6第3項は,特定外国子会社等の事業活動が

事務所,店舗,工場その他の固定施設を有し実体を備えていることなど

経済合理性を有すると認められるための要件を法定した上,

これらの要件がすべて満たされる場合には

同条1項の規定を適用しないこととしている。

 

さらに,内国法人に対して同条1項の規定が適用される場合において,

その特定外国子会社等の所得に対しても

外国法人税が別途課されることとなれば,

経済的な意味において所得に対する二重課税が生ずることから,

措置法66条の7第1項は,課税対象留保金額に対する

外国法人税の額を基に所定の方法で計算した金額を

当該事業年度における当該内国法人の所得に対する

法人税の額から控除することを認めて,当該内国法人が

特定外国子会社等を利用しなかった場合とほぼ等しい

税負担となるように調整することとしている。

 

上記のような措置法の各規定等から成る我が国の

タックス・ヘイブン対策税制は,特定外国子会社等に

所得を留保して我が国の税負担を免れることとなる内国法人に対しては

当該所得を当該内国法人の所得に合算して課税することによって

税負担の公平性を追求しつつ,特定外国子会社等の事業活動に

経済合理性が認められる場合を適用除外とし,かつ,

それが適用される場合であっても所定の方法による

外国法人税額の控除を認めるなど,全体として

合理性のある制度ということができる。

 

そうすると,我が国のタックス・ヘイブン対策税制は,

シンガポールの課税権や同国との間の国際取引を不当に阻害し,

ひいては日星租税条約の趣旨目的に反するようなものということもできない

 

以上のとおり,日星租税条約の趣旨目的も,

措置法66条の6第1項のようなタックス・ヘイブン対策税制を

設けることのできる課税権が制約されると解釈すべき根拠となるものではない。

 

6 したがって,措置法66条の6第1項の規定が

日星租税条約7条1項の規定に違反していると解することはできない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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