テレビ番組で弁護士が他の弁護士らについて懲戒請求をするよう視聴者に呼び掛けた行為

( 平成23年7月15日最高裁)

事件番号  平成21(受)1905

 

この裁判は、

弁護士であるテレビ番組の出演者において特定の刑事事件の

弁護団の弁護活動が懲戒事由に当たるとして上記弁護団を構成する

弁護士らについて懲戒請求をするよう視聴者に呼び掛けた行為が,

不法行為法上違法とはいえないとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

本件呼び掛け行為は,懲戒請求そのものではなく,

視聴者による懲戒請求を勧奨するものであって,

前記認定事実によれば娯楽性の高いテレビのトーク番組における

出演者同士のやり取りの中でされた表現行為の一環といえる。

 

その趣旨とするところも,報道されている本件弁護活動の内容は

問題であるという自己の考えや懲戒請求は広く

何人にも認められるとされていること(弁護士法58条1項)を踏まえて,

本件番組の視聴者においても同様に

本件弁護活動が許せないと思うのであれば,

懲戒請求をしてもらいたいとして,

視聴者自身の判断に基づく行動を促すものである。

 

その態様も,視聴者の主体的な判断を妨げて懲戒請求をさせ,

強引に懲戒処分を勝ち取るという運動を

唱導するようなものとはいえない。

 

他方,第1審原告らは,社会の耳目を

集める本件刑事事件の弁護人であって,

その弁護活動が,重要性を有することからすると,

社会的な注目を浴び,その当否につき国民による

様々な批判を受けることはやむを得ないものといえる。

 

そして,第1審原告らについてそれぞれ600件を超える

多数の懲戒請求がされたについては,多くの視聴者等が

第1審被告の発言に共感したことや,第1審被告の関与なくして

インターネット上のウェブサイトに掲載された本件書式を使用して

容易に懲戒請求をすることができたことが

大きく寄与しているとみることができる。

 

のみならず,本件懲戒請求は,本件書式にあらかじめ

記載されたほぼ同一の事実を懲戒事由とするもので,

広島弁護士会綱紀委員会による事案の調査も

一括して行われたというのであって,

第1審原告らも,これに一括して反論をすることが可能であったことや,

本件懲戒請求については,同弁護士会懲戒委員会における

事案の審査は行われなかったことからすると,

本件懲戒請求がされたことにより,

第1審原告らに反論準備等のために一定の負担が生じたことは

否定することができないとしても,その弁護士業務に

多大な支障が生じたとまでいうことはできない。

 

(4) これまで説示したところによれば,

第1審被告の本件呼び掛け行為は,

弁護士としての品位を失うべき非行に当たるとして,

弁護士会における自律的処理の対象として検討されるのは

格別,その態様,発言の趣旨,第1審原告らの弁護人としての

社会的立場,本件呼び掛け行為により負うこととなった

第1審原告らの負担の程度等を総合考慮すると,

本件呼び掛け行為により第1審原告らの被った精神的苦痛が

社会通念上受忍すべき限度を超えるとまではいい難く,

これを不法行為法上違法なものであるということはできない

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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