不当利得金請求事件
(平成11年7月19日最高裁)
事件番号 平成7(オ)2468
最高裁判所の見解
1 共同相続人のうちの一人又は数人が、
相続財産のうち自己の本来の相続持分を超える部分について、
当該部分の表見相続人として当該部分の真正共同相続人の
相続権を否定し、その部分もまた自己の相続持分であると
主張してこれを占有管理し、
真正共同相続人の相続権を侵害している場合にも
民法八八四条は適用される。
しかし、真正共同相続人の相続権を侵害している共同相続人が、
他に共同相続人がいること、ひいて相続財産のうち
自己の本来の持分を超える部分が他の共同相続人の
持分に属するものであることを知りながらその部分もまた
自己の持分に属するものであると称し、
又はその部分についてもその者に相続による持分があるものと
信ぜられるべき合理的な事由があるわけではないにもかかわらず
その部分もまた自己の持分に属するものであると称し、
これを占有管理している場合は、
もともと相続回復請求制度の適用が予定されている場合には当たらず、
相続回復請求権の消滅時効を援用して真正共同相続人からの
侵害の排除の請求を拒むことはできない
(最高裁昭和四八年(オ)第八五四号同五三年一二月二〇日大法廷判決・
民集三二巻九号一六七四頁)。
2 真正共同相続人の相続権を侵害している共同相続人が
他に共同相続人がいることを知っていたかどうか及び
本来の持分を超える部分についてもその者に相続による
持分があるものと信ぜられるべき合理的な事由があったかどうかは、
当該相続権侵害の開始時点を基準として判断すべきである。
そして、相続回復請求権の消滅時効を援用しようとする者は、
真正共同相続人の相続権を侵害している共同相続人が、
右の相続権侵害の開始時点において、
他に共同相続人がいることを知らず、かつ、これを知らなかったことに
合理的な事由があったこと
(以下「善意かつ合理的事由の存在」という。)を
主張立証しなければならないと解すべきである。
なお、このことは、真正共同相続人の相続権を
侵害している共同相続人において、
相続権侵害の事実状態が現に存在することを知っていたかどうか、
又はこれを知らなかったことに合理的な事由があったかどうかに
かかわりないものというべきである。
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