不当労働行為救済命令取消

(平成7年9月8日最高裁)

事件番号  平成3(行ツ)34

 

最高裁判所の見解

当該企業に雇用される労働者のみをもって

組織される労働組合(いわゆる企業内組合)は、

当該企業の物的施設(以下「企業施設」という。)内を

その活動の主要な場とせざるを得ないのが実情であり、

その活動につき企業施設を利用する必要性

の大きいことは否定することができない。

 

しかし、労働組合が当然に使用者の所有し管理する

企業施設を利用する権利を保障されているということはできず、

労働組合による企業施設の利用は、本来、

使用者との団体交渉等による合意に基づいて行われるべきものであって、

労働組合にとって利用の必要性が大きいことのゆえに、

労働組合又はその組合員において企業施設を使用者の許諾なしに

組合活動のために利用し得る権限を取得し、また、

使用者において労働組合又はその組合員の組合活動のためにする

企業施設の利用を受忍しなければならない義務を

負うと解すべき理由はない。

 

そして、労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで

企業施設を利用して組合活動を行うことは、

これらの者に対しその利用を許さないことが当該企業施設につき

使用者が有する権利の濫用であると

認められるような特段の事情がある場合を除いては、

当該企業施設を管理利は、使用者が利用を許諾しないからといって、

直ちに団結権を侵害し、不当労働行為を

構成するということはできない。

 

これを本件についてみると、組合結成通知を受けてから

E守衛事件まで約九箇月にわたり、上告人は、

許可願の提出があれば業務に支障のない限り

食堂の使用を許可していたというのであるが、

そのことから直ちに上告人が組合に対し食堂の使用につき

包括的に許諾をしていたものということはできず、

その取扱いを変更することが許されなくなるものではない。

 

一方、E守衛事件が起きた直後に上告人から

会場使用許可願を却下されて以来、組合は、

上告人所定の会場使用許可願用紙を勝手に書き変えた

使用届を提出するだけで、上告人の許可なく

食堂を使用するようになり、こうした無許可使用を

上告人が食堂に施錠するようになるまで五箇月近く続けていたのであって、

これが上告人の施設管理権を無視するものであり、

正当な組合活動に当たらないことはいうまでもない。

 

上告人は、組合に対し、所定の会場使用許可願を提出すること、

上部団体の役員以外の外部者の入場は総務部長の許可を得ること、

排他的使用をしないことを条件に、支障のない限り、

組合大会開催のため食堂の使用を

許可することを提案しているのであって、

このような提案は、施設管理者の立場からは

合理的理由のあるものであり、許可する集会の範囲が

限定的であるとしても、組合の拒否を見越して

形式的な提案をしたにすぎないということはできない。

 

また、上告人は組合に対し使用を拒む正当な理由がない限り

食堂を使用させることとし、外部者の入場は

制限すべきではないなどとする組合からの提案も、

上告人の施設管理権を過少に評価し、

あたかも組合に食堂の利用権限があることを

前提とするかのような提案であって、

組合による無許可使用の繰り返しの事実を併せ考えるならば、

上告人の施設管理権を無視した要求であると上告人が

受け止めたことは無理からぬところである。

 

そうすると、上告人が、E守衛事件を契機として、

従前の取扱いを変更し、その後、食堂使用について

施設管理権を前提とした合理的な準則を定立しようとして、

上告人の施設管理権を無視する組合に対し使用を拒否し、

使用条件について合意が成立しない結果、

自己の見解を維持する組合に対し食堂を

使用させない状態が続いたことも、

やむを得ないものというべきである。

 

以上によれば、本件で問題となっている施設が食堂であって、

組合がそれを使用することによる上告人の業務上の支障が

一般的に大きいとはいえないこと、

組合事務所の貸与を受けていないことから

食堂の使用を認められないと企業内での組合活動が困難となること、

上告人が労働委員会の勧告を拒否したことなどの事情を

考慮してもなお、条件が折り合わないまま、

上告人が組合又はその組合員に対し食堂の使用を

許諾しない状態が続いていることをもって、

上告人の権利の濫用であると認めるべき

特段の事情があるとはいえず、組合の弱体化を

図ろうとしたものであるとも断じ得ないから、

上告人の食堂使用の拒否が不当労働行為に当たるということはできない。

 

そうすると、本件命令一を適法であるとした原審の判断には、

労働組合法七条三号の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ず、

その違法が判決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。

 

この点をいう論旨は理由があり、原判決のうち

本件命令一に関する部分は破棄を免れない。

 

そして、前記説示によれば、本件命令一を違法として

取り消した第一審判決は正当であり、

右部分に関する被上告人の控訴はこれを棄却すべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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