不正競争防止法2条1項1号,2号にいう「営業」と宗教法人の宗教活動

(平成18年1月20日最高裁)

事件番号  平成17(受)575

 

この裁判では、

不正競争防止法2条1項1号,2号にいう「営業」と

宗教法人の宗教活動について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

不正競争防止法1条は,同法の目的が,

事業者間の公正な競争及びこれに関する

国際約束の的確な実施を確保するため,

不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ,

もって国民経済の健全な発展に寄与することにあると定める。

 

また,「1900年12月14日にブラッセルで,

1911年6月2日にワシントンで,

1925年11月6日にヘーグで,

1934年6月2日にロンドンで,

1958年10月31日にリスボンで及び

1967年7月14日にストックホルムで改正された

工業所有権の保護に関する1883年3月20日のパリ条約」は,

「工業上又は商業上の公正な慣習に反するすべての競争行為は,

不正競争行為を構成する」と規定し(10条の2(2)),

このような不正競争行為の防止を

工業所有権の保護の対象と位置付ける(1条(2))とともに,

各同盟国が同盟国の国民を不正競争から

有効に保護すべきことを要請する(10条の2(1))。

 

昭和9年に制定された旧不正競争防止法

(平成5年法律第47号による改正前のもの)は,

ヘーグでの改正に係る上記条約の要請を踏まえて制定されたものである。

 

これらの規定や旧不正競争防止法以来の沿革等に照らすと,

不正競争防止法は,営業の自由の保障の下で

自由競争が行われる取引社会を前提に,

経済活動を行う事業者間の競争が自由競争の範囲を逸脱して濫用的に行われ,

あるいは,社会全体の公正な競争秩序を破壊するものである場合に,

これを不正競争として防止しようとするものにほかならないと解される。

 

そうすると,同法の適用は,上記のような意味での競争秩序を

維持すべき分野に広く認める必要があり,

社会通念上営利事業といえないものであるからといって,

当然に同法の適用を免れるものではないが,他方,

そもそも取引社会における事業活動と

評価することができないようなものについてまで,

同法による規律が及ぶものではないというべきである。

 

これを宗教法人の活動についてみるに,

宗教儀礼の執行や教義の普及伝道活動等の本来的な宗教活動に関しては,

営業の自由の保障の下で自由競争が行われる取引社会を前提とするものではなく,

不正競争防止法の対象とする競争秩序の維持を

観念することはできないものであるから,

取引社会における事業活動と評価することはできず,

同法の適用の対象外であると解するのが相当である。

 

また,それ自体を取り上げれば収益事業と認められるものであっても,

教義の普及伝道のために行われる出版,講演等本来的な宗教活動と

密接不可分の関係にあると認められる事業についても,

本来的な宗教活動と切り離してこれと

別異に取り扱うことは適切でないから,

同法の適用の対象外であると解するのが相当である。

 

これに対し,例えば,宗教法人が行う

収益事業(宗教法人法6条2項参照)としての

駐車場業のように,取引社会における競争関係という観点からみた場合に

他の主体が行う事業と変わりがないものについては,

不正競争防止法の適用の対象となり得るというべきである。

 

不正競争防止法2条1項1号,2号は,

他人の商品等表示(人の業務に係る

氏名,商号,商標,標章,商品の容器若しくは

包装その他の商品又は営業を表示するもの)と

同一若しくは類似のものを使用し,

又はその商品等表示を使用した商品を

譲渡するなどの行為を不正競争に該当するものと規定しているが,

不正競争防止法についての上記理解によれば,

ここでいう「営業」の意義は,取引社会における

競争関係を前提とするものとして

解釈されるべきであり,したがって,

上記「営業」は,宗教法人の本来的な宗教活動及び

これと密接不可分の関係にある事業を含まないと解するのが相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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