不申告ほ脱犯の所得秘匿工作
(平成6年9月13日最高裁)
事件番号 平成2(あ)1095
最高裁判所の見解
原判決の認定するところによれば、本件は、
麻雀店三店を経営する被告人が、ほ脱の意思の下に、
店の売上金の一部をあらかじめ設けておいた仮名又は
借名の預金口座に入れて保管し、事業所得などにつき
確定申告をしなかったというものであるが、被告人は、
営業状態を把握するため、各店長に店の売上げを
正確に記載した帳簿を作成させており、
これをことさら税務当局から隠匿したり、
これとは別に虚偽の帳簿を作成したりするなどの
工作を積極的に行った形跡は認められないというのである。
しかしながら、このような場合であっても、
税務当局が税務調査において右の帳簿の内容を
確知できるという保障はないのであるから、
仮名又は借名の預金口座に売上金の一部を入金保管することは、
税務当局による所得の把握を困難にさせるものであることに変わりはなく、
ほ脱の意思に出たものと認められる以上、
所得秘匿工作に当たるものというべきであり、
このような所得秘匿工作を伴う不申告の行為は、
同法二三八条一項のほ脱罪を構成するものということができる。
したがって、原判決は結論において正当である。
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