主張立証責任

(平成18年6月6日最高裁)

事件番号  平成17(受)2058

 

この裁判では、

「衝突,接触…その他偶然な事故」を保険事故とする

自動車保険契約の約款に基づき車両の表面に傷が付けられたことが

保険事故に該当するとして車両保険金の支払を請求する場合に

おける事故の偶発性についての主張立証責任について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

商法629条が損害保険契約の保険事故を

「偶然ナル一定ノ事故」と規定したのは,

損害保険契約は保険契約成立時においては

発生するかどうか不確定な事故によって損害が生じた場合に

その損害をてん補することを約束するものであり,

保険契約成立時において保険事故が発生すること又は

発生しないことが確定している場合には,

保険契約が成立しないということを明らかにしたものと解すべきである。

 

同法641条は,保険契約者又は被保険者の悪意又は

重過失によって生じた損害については,

保険者はこれをてん補する責任を有しない旨規定しているが,

これは,保険事故の偶然性について規定したものではなく,

保険契約者又は被保険者が故意又は重過失によって

保険事故を発生させたことを保険金請求権の発生を

妨げる免責事由として規定したものと解される。

 

本件条項は,「衝突,接触,墜落,転覆,物の飛来,

物の落下,火災,爆発,盗難,台風,こう水,

高潮その他偶然な事故」を保険事故として規定しているが,

これは,保険契約成立時に発生するかどうか

不確定な事故をすべて保険事故とすることを

分かりやすく例示して明らかにしたもので,

商法629条にいう「偶然ナル一定ノ事故」を

本件保険契約に即して規定したものであり,他方,

前記約款第4章第1節第3条の条項は,保険契約者,

被保険者等が故意によって保険事故を発生させたことを,

同法641条と同様に免責事由として規定したものというべきである。

 

本件条項にいう「偶然な事故」を,

同法629条にいう「偶然ナル」事故とは異なり,

保険事故の発生時において事故が

被保険者の意思に基づかないこと

(保険事故の偶発性)をいうものと解することはできない。

 

したがって,車両の表面に傷が付けられたことが

保険事故に該当するとして本件条項に基づいて

車両保険金の支払を請求する者は,事故の発生が

被保険者の意思に基づかないものであることについて

主張,立証すべき責任を負わないというべきである。

 

原審の引用する前記平成13年4月20日第二小法廷判決は,

傷害保険についてのものであり,本件とは事案を異にする。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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