事業認定処分取消,特定公共事業認定処分取消請求事件

(平成15年12月4日最高裁)

事件番号  平成5(行ツ)50

 

行政手続に憲法31条による保障が及ぶと解すべき場合であっても,

保障されるべき手続の内容は,行政処分により制限を受ける

権利利益の内容,性質,制限の程度,行政処分により達成しようとする

公益の内容,程度,緊急性等を総合較量して決定されるべきものである。

 

そして,土地収用法(昭和47年法律第52号による改正前のもの)

第3章第1節の規定の定める手続の下に事業の認定を行うことが

土地等の所有者又は関係人の権利保護に欠けると解することはできず,

これらの規定及びこれに基づいて建設大臣がした

事業認定(昭和44年建設省告示第3865号に係るもの。

以下「本件事業認定」という。)が憲法31条の

法意に反するということはできない。

 

以上は,当裁判所の判例(最高裁昭和61年(行ツ)

第11号平成4年7月1日大法廷判決・

民集46巻5号437頁,

最高裁平成8年(行ツ)第90号同年8月28日大法廷判決・

民集50巻7号1952頁)の趣旨に徴して明らかというべきである。

 

公共用地の取得に関する特別措置法(平成11年法律第160号による改正前のもの。

以下「法」という。)7条の規定による特定公共事業の認定を受けた起業者は,

収用委員会に対し,法20条1項の規定により緊急裁決を申し立てることができ,

緊急裁決においては,損失の補償に関する事項で

まだ審理を尽くしていないものがある場合においても,

権利取得裁決又は明渡裁決がされ(同項),概算見積りによる

仮補償金が定められるものとされている(法21条1項)。

 

緊急裁決は,公共の利害に特に重大な関係があり,

緊急に施行することを要する事業に

必要な土地等を取得するため(法1条,7条),

明渡裁決が遅延することによって事業の施行に

支障を及ぼすおそれがある場合に特に認められるものであり(法20条1項),

緊急裁決において定められた権利取得の時期又は

明渡しの期限までに仮補償金の額の払渡し又は供託がなければ,

緊急裁決は失効するとされている(法27条,土地収用法100条)。

 

そして,収用委員会は,緊急裁決の後も引き続き審理して,

遅滞なく補償裁決をし(法30条1項),

補償裁決で定められた補償金額と緊急裁決で

定められた仮補償金の額とに差額があるときは,

年6分の利率により算定した利息を付して清算するものとされ

(法33条1項,2項,34条1項),

緊急裁決においては最終的な補償義務の履行を確保するために

起業者に担保の提供を命ずることが(法26条1項),

補償裁決においては起業者が裁決に基づく義務の履行を怠った場合に

支払うべき過怠金を定めることが(法34条2項),

それぞれできるとされ,法は,

最終的に正当な補償がされるための措置を講じている。

 

憲法29条3項は,補償の時期については何ら規定していないのであるから,

補償が私人の財産の供与に先立ち又はこれと同時に履行されるべきことを

保障するものではないと解すべきである

(最高裁昭和23年(れ)第829号同24年7月13日大法廷判決・

刑集3巻8号1286頁)。

 

そして,上記関係規定が定める補償に関する措置に不合理な点はないから,

法が定める緊急裁決の制度が憲法29条3項に違反するとはいえない。

以上は,上記大法廷判決の趣旨に徴して明らかである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


スポンサードリンク