交通事故の被害者がその後に第二の交通事故により死亡した場合

(平成8年5月31日最高裁)

事件番号  平成5(オ)1958

 

最高裁判所の見解

交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害のために

労働能力の一部を喪失した場合における

財産上の損害の額を算定するに当たっては、

その後に被害者が死亡したとしても、

交通事故の時点で、その死亡の原因となる具体的事由が存在し、

近い将来における死亡が客観的に

予測されていたなどの特段の事情がない限り、

右死亡の事実は就労可能期間の算定上

考慮すべきものではないと解するのが相当である

(最高裁平成五年(オ)第五二七号同八年四月二五日第一小法廷判決・

民集五〇巻五号登載予定参照)。

 

右のように解すべきことは、被害者の死亡が

病気、事故、自殺、天災等のいかなる事由に基づくものか、

死亡につき不法行為等に基づく責任を負担すべき第三者が存在するかどうか、

交通事故と死亡との間に相当因果関係ないし条件関係が

存在するかどうかといった事情によって異なるものではない。

 

本件のように被害者が第二の交通事故によって死亡した場合、

それが第三者の不法行為によるものであっても、

右第三者の負担すべき賠償額は最初の交通事故に基づく

後遺障害により低下した被害者の労働能力を前提として

算定すべきものであるから、前記のように解することによって初めて、

被害者ないしその遺族が、前後二つの交通事故により

被害者の被った全損害についての賠償を受けることが可能となるのである。

 

三 また、交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害のために

労働能力の一部を喪失した後に死亡した場合、

労働能力の一部喪失による財産上の損害の額の算定に当たっては、

交通事故と被害者の死亡との間に相当因果関係があって死亡による

損害の賠償をも請求できる場合に限り、

死亡後の生活費を控除することができると解するのが相当である。

 

けだし、交通事故と死亡との間の相当因果関係が認められない場合には、

被害者が死亡により生活費の支出を必要としなくなったことは、

損害の原因と同一原因により生じたものということができず、

両者は損益相殺の法理又はその類推適用により

控除すべき損失と利得との関係にないからである。

 

四 これを本件についてみるに、前記事実関係によれば、

Dは、本件後遺障害により労働能力の一部を喪失し、

これによる損害を被っていたところ、

別件交通事故によるDの死亡については、

前記の特段の事情があるとは認められず、また、

本件交通事故との間の相当因果関係も認められない。

 

したがって、右労働能力喪失による

財産上の損害額の算定に当たっては、

別件交通事故によるDの死亡の事実を就労可能期間の

算定上考慮すべきではなく、また、

Dの死亡後の生活費を控除することもできない。

 

原判決は、結論においてこれと同旨をいうものであって、

正当として是認することができる。

 

論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、

採用することができない。

 

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