人身保護法に基づき幼児の引渡しを請求する場合における拘束の顕著な違法性

(平成6年11月8日最高裁)

事件番号  平成6(オ)1437

 

最高裁判所の見解

人身保護法に基づく幼児の引渡請求において、

拘束が権限なしにされていることが顕著である場合(人身保護規則四条)に

該当するかどうかの判断について、

当裁判所の判例(最高裁平成五年(オ)第六〇九号同年一〇月一九日第三小法廷判決・

民集四七巻八号五〇九九頁、最高裁平成六年(オ)第六五号同年四月二六日第三小法廷判決・

民集四八巻三号九九二頁)は、請求者と拘束者とが共に

幼児に対して親権を行う者である場合、

拘束者による幼児に対する監護・拘束が権限なしにされていることが

顕著であるということができるためには、

右監護が請求者による監護に比べて子の幸福に反することが

明白であることを要する旨を判示している。

 

しかし、拘束が権限なしにされていることが顕著であるかどうかについての

右の判断基準は、右判例の明示するように、

夫婦の一方が他方に対し、人身保護法に基づき、

共同親権に服する幼児の引渡しを請求する事案につき

適用されるものであって、法律上監護権を有する者が

監護権を有しない者に対し、

人身保護法に基づいて幼児の引渡しを請求する場合は、

これと全く事案を異にする。

 

法律上監護権を有しない者が幼児をその監護の下において拘束している場合に、

監護権を有する者が人身保護法に基づいて幼児の引渡しを請求するときは、

請求者による監護が親権等に基づくものとして

特段の事情のない限り適法であるのに対して、

拘束者による監護は権限なしにされているものであるから、

被拘束者を監護権者である請求者の監護の下に

置くことが拘束者の監護の下に置くことに比べて子の

幸福の観点から著しく不当なものでない限り、

非監護権者による拘束は権限なしに

されていることが顕著である場合(人身保護規則四条)に該当し、

監護権者の請求を認容すべきものとするのが相当である

(最高裁昭和四七年(オ)第四六〇号同年七月二五日第三小法廷判決・

裁判集民事一〇六号六一七頁、最高裁昭和四七年(オ)

第六九八号同年九月二六日第三小法廷判決・

裁判集民事一〇六号七三五頁、最高裁昭和六一年(オ)第六四四号

同年七月一八日第二小法廷判決・民集四〇巻五号九九一、九九六頁参照)。

 

本件においては、請求者である上告人は被拘束者の親権者であり、

その監護をする権利を有する者であるのに対し、

被上告人B1は拘束者の父であるとはいえ、

いまだにその認知をするに至っていないというのであり、また、

被上告人B2は被拘束者とは血縁関係を有せず、

被上告人B1の依頼に基づいてその監護を行っているものである。

 

したがって、被拘束者を上告人の監護の下に置くことが

被上告人らの監護の下に置くことに比べて

子の幸福の観点から著しく不当なものでない限り、

被上告人らによる拘束は権限なしにされていることが

顕著である場合に該当し、

上告人の請求を認容すべきところ、前記事実関係に照らすと、

被拘束者の監護について、上告人は被上告人らに比べて

経済的な面において劣る点があるものの、

被拘束者に対する愛情及び監護意欲の点においては

優るとも劣らないと考えられるのであって、

本件において、親権者である上告人が被拘束者を監護することが

著しく不当なものであるとは到底いうことができない。

 

四 そうすると、原審の判断は人身保護法二条、

人身保護規則四条の解釈適用を誤ったものであり、

この違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

 

そして、前記認定事実を前提とする限り、

上告人の本件請求はこれを認容すべきところ、

本件については、幼児である被拘束者の法廷への出頭を確保する必要があり、

この点をも考慮すると、前記説示するところに従い、

原審において改めて審理判断させるのを相当と認め、

これを原審に差し戻すこととする。

 

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