仮差押えによる時効中断の効力の継続
(平成10年11月24日最高裁)
事件番号 平成7(オ)1413
最高裁判所の見解
1 仮差押えによる時効中断の効力は、
仮差押えの執行保全の効力が存続する間は
継続すると解するのが相当である
(最高裁昭和五八年(オ)第八二四号同五九年三月九日第二小法廷判決・
裁判集民事一四一号二八七頁、最高裁平成二年(オ)第一二一一号
同六年六月二一日第三小法廷判決・民集四八巻四号一一〇一頁参照)。
けだし、民法一四七条が仮差押えを時効中断事由としているのは、
それにより債権者が、権利の行使をしたといえるからであるところ、
仮差押えの執行保全の効力が存続する間は仮差押債権者による
権利の行使が継続するものと解すべきだからであり、
このように解したとしても、債務者は、
本案の起訴命令や事情変更による
仮差押命令の取消しを求めることができるのであって、
債務者にとって酷な結果になるともいえないからである。
また、民法一四七条が、仮差押えと裁判上の請求を別個の時効中断事由と
規定しているところからすれば、仮差押えの被保全債権につき
本案の勝訴判決が確定したとしても、仮差押えによる
時効中断の効力がこれに吸収されて消滅するものとは解し得ない。
2 これを本件についてみると、前記の事実関係によれば、
原判決別紙物件目録記載(三)ないし(五)の各不動産については、
本件仮差押えの執行保全の効力が現在まで存続しているのであるから、
本件仮差押えの被保全債権について時効は
中断しているものといわなければならない。
したがって、以上と異なり、右債権について
消滅時効の完成を肯定した原判決の判断には、
法令の解釈適用を誤った違法があり、
その違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。
論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。
そして、本件仮差押えの被保全債権の残存額について、
更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。
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