休業補償給付等不支給処分取消

(平成7年7月6日最高裁)

事件番号  平成4(行ツ)68

 

最高裁判所の見解

1 法八条二項一号は、裁決前置主義が採られている場合であっても、

裁決庁の裁決が遅延することによって

国民の司法救済が遅れるという事態を回避するために、

裁決前置主義を緩和すべき一場合を定めるものである。

 

行政処分について、二段階の審査請求手続が定められ、かつ、

第二段階の審査請求に対する裁決の前置主義が

採られている場合に、仮に法八条二頃一号の

「審査請求」が第二段階の審査請求だけを指すものであるとすれば、

第一段階の審査請求に対する裁決が遅延するときには、

行政処分の取消しを求める者は、同号の適用によって

司法救済を受けることができず、

第一段階の審査請求に対する裁決について

不作為の違法確認の訴えを経なければ、

処分の取消しの訴えを適法に提起し得ないこととなる。

 

このような事態は、国民の司法救済の道を不当に

閉ざすものであるといわなければならない。

 

右の場合には、法律に特段の定めがない限り

(国税通則法一一五条一項一号、七五条五項参照)、

法八条二項一号の「審査請求」は、

第一段階の審査請求と第二段階の審査請求のいずれをも指し、

そのいずれに対する裁決が遅延するときにも、

同号が適用され、裁決前置主義が緩和されるものと解すべきである。

 

2 労働者災害補償保険法は、前記のとおり、

保険給付に関する決定に対する不服について、

二段階の審査請求手続を定め、かつ、取消しの訴えにつき

第二段階の審査請求に対する裁決の前置を定めている。

 

その趣旨は、多数に上る保険給付に関する決定に対する

不服事案を迅速かつ公正に処理すべき要請にこたえるため、

専門的知識を有する特別の審査機関を設けた上、

裁判所の判断を求める前に、簡易迅速な処理を図る

第一段階の審査請求と慎重な審査を行い併せて行政庁の判断の統一を

図る第二段階の再審査請求とを必ず経由させることによって、

行政と司法の機能の調和を保ちながら、

保険給付に関する国民の権利救済を実効性のあるものとしよう

とするところにあると解せられるから、

再審査請求に対する裁決を経ないで取消しの訴えが提起されることは、

本来同法の所期するところではないといえる。

 

しかし、そうであるからといって、これらの定めから、

保険給付に関する決定について、法八条二項一号の

「審査請求」を第二段階の審査請求に限定するとの趣旨を

読み取ることはできないのみならず、

労働者災害補償保険法は、審査請求に対する決定が

遅延した場合に決定を経ないで再審査請求をすることを許容するなど、

その遅延に対する救済措置の定めを置いていないのであって、

それにもかかわらず、第一段階の審査請求についての

法八条二項一号の不適用を定めたものと解するならば、

国民の司法救済の道を不当に閉ざす結果を招くことは明らかであるから、

そのような解釈は採り得ないといわなければならない。

 

3 したがって、保険給付に関する決定に不服のある者は、

労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をした日から

三箇月を経過しても決定(法八条二項一号の「裁決」に当たる。)がないときは、

審査請求に対する決定及び再審査請求の手続を経ないで、

処分の取消しの訴えを提起することができるものというべきである。

 

三 そうすると、原判決には法八条二項一号の解釈適用を誤った違法があり、

右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、

論旨は理由があり、その余の論旨について判断するまでもなく、

原判決は破棄を免れない。

 

そして、本件訴えを却下した第一審判決を取り消して、

本件を第一審に差し戻すべきである。

 

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