会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間

(平成20年1月28日最高裁)

事件番号  平成18(受)1074

 

この裁判では、

商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号に基づく

会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

本件は,預金保険法附則7条1項所定の整理回収業務を行う被上告人が,

銀行の取締役であった上告人に対し,

融資の際に上告人に忠実義務,善管注意義務違反があったと主張して,

商法(平成17年法律第87号による改正前のもの。以下同じ。)266条1項5号に基づく

損害賠償請求をする事案であり,同損害賠償請求権の消滅時効期間が争点である。

 

株式会社の取締役は,受任者としての義務を

一般的に定める商法254条3項(民法644条),

商法254条ノ3の規定に違反して会社に損害を与えた場合に

債務不履行責任を負うことは当然であるが(民法415条),

例えば,違法配当や違法な利益供与等が会社ないし

株主の同意の有無にかかわらず取締役としての

職務違反行為となること(商法266条1項1号,2号)からも明らかなように,

会社の業務執行を決定し,その執行に当たる立場にある

取締役の会社に対する職務上の義務は,

契約当事者の合意の内容のみによって定められるものではなく,

契約当事者の意思にかかわらず,法令によってその内容が規定されるという

側面を有するものというべきである。

 

商法266条は,このような観点から,

取締役が会社に対して負うべき責任の

明確化と厳格化を図る趣旨の規定であり

(最高裁平成8年(オ)第270号同12年7月7日

第二小法廷判決・民集54巻6号1767頁参照),

このことは,同条1項5号に基づく

取締役の会社に対する損害賠償責任が,

民法415条に基づく債務不履行責任と異なり

連帯責任とされているところにも現れているものと解される。

 

これらのことからすれば,商法266条1項5号に基づく

取締役の会社に対する損害賠償責任は,

取締役がその任務を懈怠して会社に損害を被らせることによって

生ずる債務不履行責任であるが,法によって

その内容が加重された特殊な責任であって,

商行為たる委任契約上の債務が単に

その態様を変じたにすぎないものということはできない。

 

また,取締役の会社に対する任務懈怠行為は外部から

容易に判明し難い場合が少なくないことをも考慮すると,

同号に基づく取締役の会社に対する損害賠償責任については

商事取引における迅速決済の要請は妥当しないというべきである。

 

したがって,同号に基づく取締役の会社に対する

損害賠償債務については,

商法522条を適用ないし類推適用すべき

根拠がないといわなければならない。

 

以上によれば,商法266条1項5号に基づく

会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間は,

商法522条所定の5年ではなく,

民法167条1項により10年と解するのが相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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